ヤンデレに愛されて仕方が無い第五十一話
尋問は地下室で行われていた。
東院と八峡は地下へと降りていく。
部屋は座敷牢だ。
その中に縄で縛られた男女が数十人居た。
「おぅおぅ、すし詰め状態じゃんかよ」
八峡がその人数を愉快そうに言った。
見張りの従士たちが東院を見て頭を下げる。
そして八峡と東院は座敷牢の隣の部屋へと通された。
其処は色々な拷問器具が置かれた部屋だ。
部屋の中は物騒な拷問器具を除けば質素な部屋だが。
これまで東院家の人間が責め苦をさせた者の血がこびり付いていた。
その部屋の中心に、椅子に縛り付けられた三十代程の男が座っている。
色々な拷問を受けたのだろう。無精髭の面は自身の血で乾いていた。
「コイツかぁ?」
「あの中ではコイツの使役していた厭穢が強かった」
「つまりこの男がその中でも権威があるのだろう」
「貴様らが何をしようがァ!私は何も話す事など無いィ!」
男が八峡たちに気が付くとそう声を荒げた。
狂った様に喚き散らす様はまるで子供の駄々に見える。
「余程の忠誠心があると見える」
「貴様ァ!教祖様が貴様を救済しようと言うにィ!」
「なぜ貴様はその考えに反する真似をするゥ!」
「教祖様の思想に反する者は死ねェ!死んでしまえェ!」
「うるせっ」
八峡は耳を閉ざした。
唾を飛ばしながら罵倒を八峡に向けて行う。
「成程、面倒くせぇな」
「俺の従士でも口を割らなかったが」
「貴様なら出来るのか?」
「あぁ……まあ大丈夫だろ」
八峡義弥は軽く言いのける。
その一言を聞いて東院は「フン」とだけ言って部屋から出ようとした。
「あ、従士とか要らねぇから、一時間以内に終わらせてやるからよ」
と、従士も部屋から追い出して完全に八峡と男の二人だけになる。
「さて……」
「む、無駄だぞ、私は、教祖様の為ならば命すら惜しくないッ」
男の意志は硬かった。
八峡もそれは承知している。
そして八峡は、椅子に縛られた男の縄を外して、椅子から乖離させた。
「忠誠心、それか、自尊心、って所か」
「なんだ貴様、私を開放するのかッ」
「そういう訳じゃねぇよ」
八峡は縛られた男を軽く押す。
腕の縛られた男はそのまま地面へと顔面を衝突させる。
八峡は、自らのベルトに手を掛けていた。
「どんなに痛めつけても強情な奴は居る」
まるで教授する様に、八峡は言葉を交わす。
そしてジッパーを下す音が聞こえた。
男は後ろを振り向く事が出来ず、八峡が何をしているのかすら分からない。
「『俺が犠牲になれば~』みたいな自己犠牲で完結する奴らだ」
その言葉はどうやら男を指している様子だ。
「何が言いたい、貴様ァ!」
「そう言った奴らの根底ってのは、自己陶酔か英雄精神かの何方かでなぁ」
「何方にしても、共通してんのは自分に酔っている事だ」
「つまり、暴力に屈しない俺カッケーって奴でよ」
「そういった奴らは、痛みじゃあ動く事は無い」
(なんだ、この男、何をしようとしている!?)
男は此処で初めて不安を覚えた。
どうしようもない不快感すら感じ始める。
「じゃあどうするか?そうした奴らの口を割る方法は」
「これが案外と簡単な話でな?痛みじゃ無ければ、別の角度で突けば良いのさ」
つまり。
「俺カッケーって思ってる所を、俺ダセーにすりゃあ良いんだよ」
そうして、八峡義弥は男のベルトを外す。
そしてズボンを一気にずり降ろした。
あられも無い姿になる男。
八峡は携帯電話でムービーを撮る。
「な、なにをするつもりだッ!」
「自尊心を折る」
「そのやり方は、まあ。省かせて貰うが……」
八峡が後ろから男の髪を掴んで引き寄せる。
そして耳元で、蕩ける様な甘い声を漏らした。
「喉が裂けるまで喘がせてやる」
その言葉で男は完全に察した。
身をよじらせて八峡から逃れようとする。
「や、止めろ貴様ッ!止めろ、止めてくれッ!」
「な、なんでも言う。貴様の知りたい事、全て、だからッァッ!」
だが、男の要求が呑まれる事は無かった。
八峡義弥は、文字通り、別の角度で突いた。
そして宣言通り、一時間で終わらせた八峡は情報を握っている。
東院は「どうやって吐かせた?」と聞いた所、八峡は「汚ねぇやり方さ」とだけ言ってはぐらかした。
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