ヤンデレに愛されて仕方が無い第五十話


そして明朝。


息苦しく喘ぐ八峡。


口元が何かに抑えられている様で息苦しい。


目を開くと其処には永犬丸が眠っていた。


    


    「すぅ……すぅ……」


    


気持ち良さそうに眠っている永犬丸士織。


八峡義弥を抱き枕の様にして眠っている。


八峡の顔面に感じるこの柔らかさは、彼女の胸だった。


    


別室だったのに何故、八峡の部屋に来るのか、それはどうでも良い。


彼女の兄である永犬丸統志郎も良く寝惚けて八峡の部屋に入ってくる事もある。


 それも全裸で。


 だから彼女も永犬丸の妹であるのだから、寝惚けて別の部屋に来るのは当たり前と言っても良いだろう。


     


     (うわ胸柔らけぇ)


     


そんな事を考えながら八峡は永犬丸の胸の感触を楽しむ。


     


     (タマんねぇなこりゃ)


     


 彼女の匂い、体温。


 八峡が感じる全ての五感がより永犬丸士織を求めていた。


     


     (大丈夫だ、十分で終わる……)


     


 そんな事を考えながら八峡義弥は永犬丸士織に手を伸ばした。


その時、扉が開かれる。


     


     「……貴様、何をしている?」


     


 そんな冷たい声が響いた。


 八峡義弥は飛び起きてその来訪者の顔を見る。


     


     「お、おぅ、どうしたこんな朝っぱらから」


     


 八峡は動揺しながらも冷静な表情を浮かべる。


だがその手は震えていた。


     


     「俺の家は淫らな小屋では無い」

     「下手な真似をするのならば……分かってるな?」


     


 東院が指を一本伸ばした。


 八峡は減滅術式を恐れて両手を上げる。


     


     「東院ちゃんタンマッ!俺がそんな事する訳ないだろッ!」


     


弁明をする。


 その騒動に永犬丸士織も起き出した。


 襦袢が乱れて肩を露出している。


 手を口に当てて欠伸をした。


     


     「ん……おはようございます、先輩」


     


 そう言って永犬丸士織は八峡と東院に挨拶をした。


 寝起きだと言うのに謎の色気を感じた八峡は彼女の開けた襦袢から見える胸を注視する。


     


    「おい、貴様」


     


 東院が睨んだ。


     


     「じょ、冗談すよォ!で、なんだよ何か用でもあんのかぁ!?」


     


 八峡が誤魔化す様に叫んだ。


 東院は忘れていた事を思い出す様に頷く。


     


     「昨夜襲撃があった」


    


     「あ、マジ?」


     


     「えと、大丈夫なんですか?」


     


 八峡義弥は想像通りと言った様子で流す。


 永犬丸士織は危険が無かったのか心配する。


     


     「俺を誰だと思っている。あの程度の雑魚、俺が手を出すまででも無かった」


     


    「全員殺したのか?」


     


     「馬鹿を言うな。奴らを殺せば屋敷が汚れるだろう」


     


 別室で全員縛っていると東院は言う。


 そして、現在は尋問をしているのだとか。


     


     「元が分かれば奴らを返す」

     「そして舐めた真似をした奴らに恐ろしさを味合わせてやる…」


     


    「で、奴ら吐いたのか?」


     


 八峡が本筋を伺う。


 東院は口を閉ざしたが、すぐに開いた。


 それを言うのは東院家の名が廃れる様で嫌な様子だ。


     


     「……いや」

     「奴ら、口が硬い」

     「宗教団体である事に間違いは無いが……」


     


絞り込むのは難しいと東院は最後まで言わなかった。


    


    「じゃあ、俺が聞いてくるわ」


    


八峡はそう言った。


 寝巻を脱いで従士が用意した服に着替える。


 従士が用意したのはホストスーツだった。


     


     「ありがとさん」


     


そう言って八峡が笑みを浮かべた。


 従士は頬を赤く染めてその場から去っていく。


     


     「俺の従士を篭絡するな」


     


     「先輩、最低です」


     


     「えぇ……なんでぇ?」


     


 二人にバッシングを受けて困惑する八峡。


服を着替えて、尋問を受けている男の場所へと向かった。


     


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