第六話・風習
え……と、あの、ね?お、お兄ちゃん。
あの……ボク……。
……ごめんねお兄ちゃん。騙す様な事をして。
……ボク、本当は男だったんだ。「なんで女装してんだよ」えっとね……魔除けってあるよね。
ある地域では、男の子として産まれたら、女装させて悪いものを取っ払うなんて言う風習があるんだ。
ボクの家……投刀塚家ではその逆で、女装する事で、厭穢を呼び寄せる風習があってね?
厭穢に対する実力を付ける為に、ワザと厭穢を誘き寄せて強制的に実力を上げるの。
大抵は十歳を超えたら、女装をしなくても良いんだけど。
ボクやお父さんは女装する事が当たり前になってて、男の服を着る事に違和感を感じるんだ。
だから、今もこうして、女の子の恰好をしているの。
あの、ね。本当に、ボクはお兄ちゃんを騙す、なんてつもりは無かったんだよ。
信じてお兄ちゃん。ボクを嫌いにならないで………。
「……まあ、事情は分かった」ほんと?気持ち悪いとか、思わないの?
「まあ、どっから見ても女だしな」うん、お父さんも、士織ちゃんも女の子にしか見えないって言ってた。
「お前が男でも女でも、俺にとっては可愛い後輩だ」お兄ちゃ……っわぷッ。
え、と……これ。「ほら、何時までもそんな溶けた服だと寒いだろ?」お兄ちゃんの服?
「風邪引く前に帰るぞ」う、うん!待ってお兄ちゃん!
あぁ……良かったぁ。お兄ちゃん、ボクを受け入れてくれた。
嬉しいなぁ、嬉しいなぁ……ボクはお兄ちゃんと一緒に居ても良いんだ……。
……この学生服……お兄ちゃんの匂いがする。頭がボウっとしちゃうよぅ……。
あぁ……お兄ちゃん……もっともっと……ボクと一緒に居てくれないかなぁ。
もっと、お兄ちゃんと一緒になりたいよ……お兄ちゃん……お兄ちゃん。
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