第五話・正体

 そらそらッ!どうだ!


 よいしょっと………ふぅ。結構倒したなぁ……。


 此処の厭穢は弱すぎる……こんなの簡単に倒せちゃうよ。


 ……でも。これならお兄ちゃんにも褒めて貰える。


 ボクが有用な存在だってわかってもらえる。


 そうなったら、きっとお兄ちゃんはボクを傍に置いてくれる筈ッ!


 ……えへへ。お兄ちゃんと一緒になれるんだ。


 お兄ちゃんの一番になれるんだッ!


 そう思うととってもやる気が出て来ちゃうなぁ。


 ……よぉーし!もっともっと頑張るぞッ!


 ―――ッ!? え、な、なに!?


 わ、わわ!しょ、触手!?


 力強い……けど。なんとかなるッ……わ、わわわ!両手がッ!


 ぬ、抜け出せないッ!ひゃっ!?なに、なんで服の中に入ってくるの!?


 触手粘液ッ、ぬるぬるして気持ち悪い……え、な、服が溶けてる!?


  ウソ、粘液で溶けちゃったの!?やだッ、このままじゃ……お兄ちゃんにボクの姿……見られちゃう…ッ!


「おい、大丈夫か!?」お、お兄ちゃん!!「触手かッ!」ダメ、お兄ちゃんッこっちに来ないでッ!


「そうも言ってられんだろッ!」でも、服が溶けてッ。お兄ちゃんに見られちゃうッ!


「我慢しろッ!」あ…力任せに手斧を振るうお兄ちゃん恰好良い……って見惚れちゃダメッ!せめて、下を隠さな……きゃッ!「投刀塚ッ!」お、兄ちゃんッ!


「大丈夫か?」ぼ、ボク……お兄ちゃんに抱っこされちゃってる……お姫様抱っこされてる……。


 ダメ……お兄ちゃんに好きって感情が溢れちゃう……こんなに密着してたら、お兄ちゃんにボクの鼓動が聞こえちゃうよ……。


「……お前、何か骨格が……」あ……お兄ちゃん……離して。「おい」良いから離して!お兄ちゃんッ!


「………もしかして、投刀塚」……お兄ちゃん。ボクの事、分かっちゃった?


「お前……男か?」………うん。そうだよ。お兄ちゃん。


 ボク……男の娘なんだ。


     


      


      


      


    



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