金髪と最強と人型
八峡義弥と東院一は森林の中へと進んでいく。
奇妙な森の中は、奥へと近づく度に気分を害す雰囲気に包み込まれていく。
「ぐ、ふ」
八峡義弥は気分が悪そうな表情をしながら、先へと進んでいく。
東院一は涼やかな表情だ。基本的に八峡義弥と東院一は仕事へと足を運んだ数が段違いである。
好戦的な東院一は殆どの仕事を一人で請け負っている。
地位の向上を目的としている為に、同期内男性の中では東院一が一番階級が高い。
因みに、女性の中では贄波璃々が一番高い。
「どうした」
「顔色が悪いぞ」
「ふふ」
八峡義弥の顔を見て悦に浸る東院一。
「うるせ、」
「は、あ」
(馬鹿に強い)
(この瘴気)
(ちとやべぇ)
(心が折れそうだ)
八峡義弥は心の内でそんな事を考えていた。
更に先に進む。森の先へと向かい続ける。
そして八峡義弥は、ある地点へと足を踏み込んだ所で。
「あ」
「う、ぷ」
「うげぁッ」
力が抜けて膝から崩れ落ちる。
そして地面に向けて吐瀉物を撒き散らした。
八峡義弥はその先へ進む事に対して拒絶反応を示した。
瘴気。それは人間に対する嫌悪感を示す厭穢特有の生理発生。
軽度の瘴気であれば、多少の嫌悪と不調を起こすが。
極度の瘴気は精神を壊す。拒絶反応を起こし、吐瀉を行ったり自信喪失が起きる。
だから下手をすればそのまま祓ヰ師を引退する者も少なくなかった。
「なんだ貴様」
「これで終わりか」
「つまらんな」
と、東院一は八峡義弥を見て蔑む様な目を向ける。
東院一はその瘴気を受けても平気だった。
先程も言った様に、東院一は仕事を受けた数が桁違いである。
つまりかなりの場数を踏んでいる。
瘴気に対抗するには、その瘴気を受け続ける。
耐性を付けなければならないのだ。
東院一は獄級の厭穢の瘴気を受けても。
平然としていられる稀有な祓ヰ師であった。
「……あ?」
「吐いただけだ」
「ボケが」
「蔑んでんじゃ、ねぇぞ」
八峡義弥は意地となって立ち上がる。
口の中に広がる酸の味。
唾液が大量分泌してそれを体外へと吐き出す。
膝は依然にして笑っている。
情けない姿であるが八峡義弥は士柄武物の柄で自身の頭を付いた。
「っし」
「行くぞ」
「瘴気、強いが」
「問題ねぇ」
「近づいてんだろ」
「厭穢がよォ」
八峡義弥がそう言うと同時。
東院一は減滅術式を使用。
あらゆる物質、エネルギーを削る減滅術式は。
東院一の周辺にある重力を削り、一人、宙を浮かび出す。
「近づいているのではない」
「既に、来ているぞ」
「あ?」
その言葉と同時。
音も無く、八峡義弥の真横から。
人型の茶色い物体が超高速で八峡義弥へと飛び出した。
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