金髪と龍殺しとハグ
「んで」
八峡義弥は茶菓子を喰らった所でそう切り出した。
辰喰蔵人は八峡義弥の言葉に反応して見詰めている。
「なんかあったのか?」
「なんだ」
「藪から棒に」
辰喰蔵人はそう言った。
八峡義弥は辰喰蔵人が自分を家に誘うなど、よっぽどな事情があるのだろうと思っていた。
「お前」
「調子悪かっただろ?」
「………」
「それは既に」
「過ぎた話だ」
「今はもう関係ない」
「冷静になったのだ」
「私は」
と辰喰蔵人は冷ややかな表情でそう言った。
八峡義弥はそんな辰喰蔵人を見て、そうかと頷くと。
「よっと」
テーブルに身を乗り出して辰喰の額に手を伸ばす。
咄嗟の事に辰喰蔵人は動く事が出来ずに目を瞑る。
そして、八峡義弥の手が辰喰蔵人の額に触れた。
「……」
「熱あんじゃん」
「顔」
「赤いぞ」
と、八峡義弥は言った。
辰喰蔵人は目を開く。
そして、八峡義弥の顔を見て、そして背けた。
「誰のせいだと」
「思っている……」
小さく、か細く。
辰喰蔵人はそう言った。
八峡義弥はその小さな声を聞くと。
「んだよ」
「俺のせいかよ」
と、自分のせいにされた事に八峡義弥は溜息を吐いた。
「まあ」
「別に」
「お前が俺のせいにしたいってなら」
「それでいいさ」
「それでお前の気持ちが」
「晴れンのならな」
そう言って八峡義弥は立ち上がる。
「……何処に行く?」
「帰るんだよ」
「俺ァお使いの最中でね」
手に持っていた手提げ袋を辰喰蔵人に向けた。
「……」
「そうか」
「なら」
「帰るんだな」
と、辰喰蔵人は少し寂しそうな表情を浮かべる。
そして辰喰蔵人は立ち上がると。
「おい八峡」
「私は」
「自身の体調を」
「貴様のせいにしたが……」
一歩近づいて。八峡義弥に近づくと。
「それが本当に」
「貴様のせいなのか」
「分からなかった」
「だから」
「お前のせいかどうか」
「確かめる為に」
「家に招いたんだ」
「本当の所はな」
そう言う。
八峡義弥は、そうか、とだけ頷いて。
「んで」
「結局俺のせいか?」
首を傾げてそう言った。
辰喰蔵人は更に一歩近づくと、八峡義弥の目前に迫る。
「まだ不十分だ」
「だから」
「これで確かめる事にする」
そう言って辰喰蔵人は手を広げる。
そして、八峡義弥の体を強く抱き締めた。
ぐぐ、と。
彼女の手が八峡義弥の背中に回る。
彼女の顔が八峡義弥の胸に治まって。
すぅ、と呼吸を行った。
「……」
「やはり」
「貴様のせいだ」
と、辰喰蔵人は。
流行る心臓の音を感じながら。
八峡義弥にそう言った。
顔は伏せられて、八峡義弥にはその表情が見えないが。
確実に彼女は、顔を真っ赤にして、恋慕を抱いていた。
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