第八話 慰め


 やかいやかい。ねえ、やかい。


「……あぁ、どうも」どうしたのかしら、まるで元気がない様子だけれど。


「あー、少し。探し物を」そう?私も探す事が出来るものなのかしら?「……いや、無理っすね」そんなに元気がなくなるだなんて、夏バテか何かなのかしら……。


 よくわからないけれど、やかいが元気が無いのは見ている私も悲しくなるわ。ねえ、やかい、どうしたらやかいのその表情を明るくすることが出来るのかしら?


「……俺も、良く分かんねぇっす」本当に?本当にそう思うの?ねぇ、やかい。考えて、何が必要なのか、何を欲しているのか。やかい、考えて。


「……俺は………っ!?」言わなくても大丈夫。やかい。あなたが欲しているものは、これでしょう?


「抱き締める事が、すか?」そう……。悲しい事があると、何か怖い事があると、寂しい事があると、一人じゃどうしようも無いと感じてしまうでしょう。


 だけど、誰かが傍に居れば。その悲しみも怖さも寂しさも、一緒に分ける事が出来るの。


「そう……なんす、か?」うん。逆にね?やかい。喜びや嬉しさや楽しさは、二人で共有すればその倍になってくるものなの。だから、私がやかいの悲しみを受け取ってあげる。私がやかいの楽しみを倍にしてあげる。悲しい事は、私の胸で泣いても良いの。ね?、やかい。


「俺は……」いいの、いいのよ、やかい。私に全てを吐き出して?涙が枯れる程に泣いて……泣き疲れたら、私がいい子いい子しながら、寝かしつけてあげるから。


「………俺は……」そう。やかい、それでいいの。いーっぱい泣いて、彼女を失った悲しみを拭い去って、また新しい道を探せば良いわ。


 大丈夫、私が傍にいるから。私の時間が許されるその時まで、ずっとずっと……傍に居てあげるわ。


 だからやかいは、何も心配しなくてよいのよ?




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