第六話 浮気

 今日は体がすこぶる調子が良いわ。


 なんだか夢の中に居るくらいに元気なの。


 今日はやかいと一緒に居ようかしら。今日は一日中なにをしても大丈夫な気がするわ。


 あ。やかい。後ろ姿でも分かる金髪ね。ねぇ、やかい。ねえ、ね……ぇ?


 あれ?あれ、あれ?やかい、その子は誰かしら?女の子?お友達?それとも知り合い?ん?同級生、ふぅん。気付かれてないみたいだし、少し様子でも見ましょうかしら。


 大丈夫、彼女はやかいのタイプじゃないもの。そういう関係じゃないわ。いやね私は、そういう束縛みたいな感情を思い浮かべてしまうだなんて。


 大丈夫、大丈夫、あれは違う、違うわ。………ねえ。どうして手を繋いでいるのかしら?


 その手は私が握る筈でしょうに、どうしてかしら?おかしいわ。あぁ。きっと彼女は寂しがりやなのね、特別な感情なんてない、ただ誰かの手を握っていないとダメな子なんだわ。


 そう、そうよ、きっとそう。安心したわ。大丈夫、大丈夫。大丈夫でしょう?ねぇ。


 ……誰も居ない場所に移動して、何をしようと言うの?ねえ。どうして服を脱いでいるの?ねえねえ。どうして二人はキスをしているの?


 私はまだ彼ともそういう事をしていないのに。やかいは私にそんな真似をしていないのに。

 どうして?ねぇ、ねぇねえ?どうして、どうしてどうして?


 私以外の女と付き合ってるの?それっておかしくない?あなたは私の事が好きで、私はあなたの事が好き、相思相愛の中だったんじゃないの?


 ダメよそんな浮気なんて真似をしたら。私、こんな悲しい事を感じてしまうの、はじめてなの。


 なんだか苦しいわ。体は大丈夫なのに、心が痛いわ。どうしてなのかしら。……いいえ、分かってる。あなたが、やかいが他の女と楽しんでいる様を見ていると、私は溜まらなく苛立ってしまうのね。


 私のお気に入りが、私を置いて楽しんでいるのが許せないのね。


 そう、そうだったの。簡単な話で。なら、その許せない存在を、どうにかしないと。


 私をだけを見る様に、しないと。


 じゃないと、私、おかしくなっちゃいそう。


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