第五話 眠る
「姉さん、姉さん姉さん姉さん!!」
んぅ……なあに、くーろん。うるさい、眠れないでしょう?
そんなに慌てて、お姉ちゃんは生きているから、心配しなくても良いのよ?
「あぁ……姉さん」あなたって心配性ね。しょうがない子。でも大丈夫。私はこれくらいじゃ死なないし、死ぬつもりも無いんだから。
……ねえ。それよりも聞いて。やかいがね。私の為にここまで連れてきてくれたのよ?それも、私の吐き出した血を気味悪がる事も無く、返り血に染まりながら医療施設に連れて来てくれたの。
これってとっても嬉しい事だとは思わない?「……また八峡ですか」ん?ふふ。嫉妬してるのね。でもいくら嫉妬しても、私とあなたが結ばれる事なんて無いのよ。
でもあなたはそれで良いんでしょう?「うん……俺は、姉さんの生き方に文句はないです」そうね。最終的には、最後の最期には、あなたが私の全てを終わらせてくれるものね。
………ふぅ。だんだんと体が脆くなってきてるわ。そろそろ限界かしら?「姉さん、そんな事は」わかるわ。だって私の体ですもの。私以外の人間が、私の事なんて分かる筈がない。だってこの体と長年連れ添って来たのは私だけだから。だから、分かるの。
うん……分かっちゃうの。「姉さん……」だから、私の終わりが近づくその瞬間まで、私は、私を愛してくれる人の傍に居たい。
だから、だからね?くーろん。あなたは、お姉ちゃんの為に協力してね?「……分かりました」そう。偉い子。それで、良い子ね。
私はもう少し、眠るわ。良い気分だから、きっとやかいの夢を見るわね、きっと。
「俺の夢は?」ふふ、おかしい事を言うのね、くーろんは。
見るわけが無いでしょうに。どうして見るだなんて思ったのかしら。おかしな子。
それじゃあ、おやすみ。くーろん。「はい、おやすみなさい」……寝てる間にいたずらしたら口を聞いてあげないから。
「……なんのことでしょう?」一昨日私の部屋に忍び込んでずっと見てたの、知ってたんだから。嘘を吐いたら熱した針を千本飲ますわ。
「光栄です」……あぁ、あなたにとってはご褒美ね、どうしましょう。
とりあえず、寝て起きてから考える事にするわ。「改めて、おやすみなさい」えぇ、おやすみ。
ふぅ………。ふふ、眠るの、たのしみ。
夢の中だけは、私の体は、綺麗だから………。
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