第八話 九重花久遠編・恋

 八峡さん、おはようございます。


 ………?どうしたんですか?意外そうな顔をして。


「表情、笑顔作れるんだな」……はい、氷の様な私は、もう居ません。


 楽しいですね、この世は。心の底から、そう思えます。


「婚約の件、どうなった?」はい、婚約は解消しました。


 きちんと、両親に筋を通し、相手方の家に向かい、きちんと面と向かって、お断りを入れました。


「お相手さん、名家だろ?そんな簡単で良いのか?」確かに、相手は憤慨してました、報復する様に、私に対し、術式を使って来ましたね。


「それ、大丈夫だったのか?」はい、大丈夫でしたよ。術式を使役した、なので私も、応戦しました。


 その結果、お相手の方も理解したご様子で、円満の内に解消。


 めでたし、めでたし、となりました。


 ただ、私も、本気を出してしまいましたから、お相手の殆どを病院送りに、してしまいましたが。


「それ全然めでたくないじゃん」めでたいですよ。少なくとも、私は。


 これで、私は誰からも、縛られる事は、無くなりましたから。


 八峡さん、あなたが、私に、恋とはなんなのかを、教えて下さった。


 恋とは、毒であり、薬。


 心を癒す薬、心を強くする薬。


 心を犯す毒、心を虜にする毒。


 私にとってあなたは、私を狂わせる毒であり、私を狂わせる薬でもある。


 それは最早、麻薬である様に、私はもう、あなたしか見えない。


「なんか怖い」怖くなど、ありませんよ。


 私は、八峡さんに、感謝をしているのですから。


 これからも、よろしくお願いしますね。


「……ま、そうだな、友達として、宜しく頼むわ」ふふふ、八峡さん。


 今更何を言ってるんですか?もう、他人事では終われませんよ?


 私が、婚約を解消したのは、何故か、分かりますか?


「あの男と結婚するのが嫌だったからだろ?」違います、あなたと結婚する為です。


 とりあえず、婚姻届などは、結婚できる、年齢になってから、二人で提出しましょう。


 けれど、結婚式は、今年中に、婚約指輪は、それ程高く無くても、良いですから。


「勝手に話を進めるな」いえ、進めます。式場は何処にしましょうか?


「やだ本当に怖いこの人っ!」この人、ではありません、私は、あなたの、妻です。


 あ、何処へ行かれるのですか?仕方のない人、ですね。


 逃げても、無駄だと言うのに。


 恋を知った私は、何でも、出来るのですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る