第五話 多禮千年世編・ナース


「全治一週間か」安静する様に、そうお医者様は言っていたわ。


 なので、この一週間は部屋から出たらダメです。メッ。


 その代わり。よーくんのお世話はお姉ちゃんがしてあげる。


 じゃじゃーん。ナースさん。


「……コスプレ?」雰囲気が出るでしょう?


 チラリズムを煽る為にミニスカートに、何時もの黒タイツじゃなくて白タイツ。


 それにこの補聴器は本物なの。ちゃんと心音だって聞こえるのよ?


「へぇ、」あ。どうでもいいって顔してるのね。


 ぐすん。お姉ちゃん、よーくんの為にお着換えしたのに。


 この聴診器、結構高かったのよ?


「じゃあ買うなよ……」よーくんの為に買ったのに、そんな素っ気ない事を言うのね?


 ぐすんぐすん。お姉ちゃん、ぐれちゃおっかな?


「めんどくせぇな……良いよ、俺が悪かったよ」その言葉が聞きたかった。


 一度は言ってみたい台詞、いま言っちゃった。「なんで?」医療関連だったからつい。


「もうなんでもいいよ……」あそう。じゃあ何時もの通り、よーくん大好きお姉ちゃんで通るわね。


 ……? あぁ。


 間違えちゃった。いつものとおり、よーくん大好きナースお姉さんで通るわね。


「ナースは必要?」必要です。だって、ナース服なんだもん。


「エロ動画でしか見そうにない服装なのに?」んー?よーくん。そういうの見るの?


「いや、出てそうだなってだけで」別に隠す事は無いじゃない。姉弟みたいなものだし。


 と言うか、よーくんが見てるえっちなビデオは、私は全て把握してるから。「はッ!?」これを着てるのもそれの影響だし、あながちよーくんの言ってる事は間違いじゃないの。


「……終わった」見られたく無かった?お姉ちゃんはそういうの気にしないから別に良いのよ。


 ただ一つ。不満があるとしたら………お姉ちゃんモノのビデオが無かった事だけなのだけれど………。


「あ、なに?」ん?えっと、今から、お姉ちゃんはよーくんの心音でも聞こうかなって。


「あー……お好きに」やった。許可取っちゃった。じゃあ遠慮なく……。


「なに、なに跨ってんの?」知らないのかしら?最近のビデオだと、こうして補聴器を当てるみたいなのよ。


「いやそれエロ動画の奴だろ」バレちゃった。でも残念。許可は取ったから撤回は出来ません。


 それじゃあ患者さん。服を脱ぎ脱ぎしましょうねー。「おいおい、勘弁してくれ」無理、ダメ、我慢できない。


 ん、よーくん。意外と筋肉質。腹筋がバッキバキね。「やめてくれぇ……」んー?やめなーい。


 つつつーっと。指先で腹筋をなぞってみたり。「擽ったいって、マジで、止めてくれッ!」えー……じゃあしょうがない。最後に、心音を聞きますねー。


 よいしょっと。んーっ。あったかい。「……聴診器は?」聴診器?そんなものあったら、こうして胸板に顔を埋めて心音を聞く事が出来ないでしょう?


「なんの為の聴診器!?」いいの。別に。私はよーくんの全てを感じたいから。


 間接的になんて、してやるものですか。こうして直接聞いてあなたを感じたいの。


 ……本当に生きてて良かった、よーくん……。死んで無くて、本当に、良かったわ……。


「……ちぃ姉」よーくん……よ、く、ぅん………はっ……はぁッ……。


「……なにしてんの?」あなたを感じていたら、なんだか、興奮して、感じてきちゃって……。


「帰れっ!」だめぇ?んんっ……もう……。


 いま、すっごく、お姉ちゃんドキドキしてるから。


 聴診器でも使って、この心音を聞いてみる?「聴かねぇよ……」ん、しょ……そうね。やっぱり、直の方が良いものね。


 下着姿で、恥ずかしくて、心音が凄く高鳴ってるけど、よーくんに、聴いて欲しい。


「聴かねぇから、話を聞けって」はい、ぎゅーっ。


「ギャーッ!話を聞けェ!」んーっ、聞かなーいっ。

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