第四話 多禮千年世編・激おこ
………よーくん?
居るんでしょう。
お姉ちゃんが迎えに来たから一緒に帰りましょう?
よーくん?どこにいるの?
よーくん。よー……くん?
よーくんッ!。ああっなんて酷い怪我っ……。
誰が、誰が、この子に、こんな真似を……。
……あなた、あなたなの?
あなたが、よーくんに、こんな酷い真似をしたの?
なんで?なんで、なんでなんで?
ねぇ。
ねぇねぇ。
あなたは、よーくんを傷つけたの。
こんなにも健気な子を、あなたは殺そうとしているのよ。
酷いと思わないの?心苦しいと思わないの?
こんなにも傷ついているこの子を見て、何も思わないの?
そう。あなたは何も思わないのね。
許せない。許さない。
あなたと言う存在は、この世に居てはならない。
だって、よーくんを傷つけるから。
あの子を傷つける輩は、存在しちゃいけないの。
だから私がよーくんの為に、よーくんを怖がらせる全てを遠ざける。
あなたは此処に居てはならない。一番遠い遠い死の果てまで飛んで行って。
………嘗て、厭穢が天魔と呼ばれていた大正の時代。
祓ヰ師以外の人間が天魔に襲われる事件が頻繁だった。
祓ヰ師たちは、力の無い人間の為に、天魔を封じる剣を与えた。
人々はその剣を担い、多くの天魔を滅し、刀に封じ込めたと言う。
それら無能の人々は何時しか剣士と呼ばれ、力なき人々は力を宿して群れを成す。
それが封魔抜刀隊の始まり、これが、その大正時代に活躍した封魔刀。
刀身には天魔が宿り、その刀は天魔の能力と相反する異能を秘めている。
火を操る天魔と相反する水と氷を司る冷気の刃。
凍えて、砕けて、さようなら。
熱を奪い、血を凍らせ、肉を砕き、命が尽きる。
時間は凍結し、意識は停滞し、貴方は氷像となる。
指一つ押せば簡単に砕けてしまう硝子細工。
けど私は、貴方に触りたくも無いから。
そのまま凍えて死んでいて。
……よーくん。
よーくん、気が付いた?
大丈夫?大丈夫?痛くない?苦しくない?
お姉ちゃんが来たから、もう安心して良いわ。
こんな危ない場所に連れて来た贄波先生を恨まないと。
でも、今はあなたが無事で良かったわ。
さあ帰りましょう?お姉ちゃんが看病してあげる。
ずっとずっと、お姉ちゃんが見ててあげるから。
だからもう何処にでも行かないでね?よーくん。
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