第5話 霊山禊編・退院後

 退院おめでとうございます。


 体調が優れている様子で、私も安心しました。


 しかし、本当に宜しいのですか?


 久しぶりの外出に、私を連れそうなどと。


 もっと他にも良いお方がいらっしゃったのでは?


 ………『お前と遊びたかった』。と申されましても………。


 恥ずかしながら外出やお使いなどはした事はありますが、街で遊ぶ、というのは初めての事でして。


 八峡様を楽しませられるかどうか、私は不安でなりません。


 ………『お前も遊ぶんだよッ!』何をどうしてどう遊べば良いのか分からないのです。


 ですので、不肖ではありますが、この霊山禊に街で遊ぶとはどうすれば良いのか、ご教授願えませんでしょうか?


 ……………ありがとうございます、それでは、この場合はまずどう遊べば良いのでしょう?


 ………はぁ。まずは『ぱちんこ』で資金を増やすのですか。


 私たちが入店しても大丈夫なのですか?え、駄目?だ、だめな事は、だめなのでは無いのでしょうか?


 あぁ………不良です。不良の真似事をしてしまうのですね。


 楽しめるかどうか、分かりませんが………八峡様のお誘い、お付き合いしましょう。


 ………………えぇと、ここに千円札を入れるのですか?


 …………………このハンドルを握って………球を飛ばす……あの穴に入れば良いのですね?


 あら………八峡様、図柄が揃いました、え?大当たりですか?


 わ、わわわ!球がいっぱい、私、どうすれば!、て、店員さぁーん!


 …………………。


 ………千円札が、たった数時間で百倍に…………。私、なんだか悪い事をしてしまった様な気がしてなりません。


 八峡様の結果は………『すろっと』で二万円を『のませた』?のですか。


『気にするな』と言われましても………八峡様。折角の儲けものです、このお金で楽しみましょう。


 ………『先輩に気を使うな』?、ですが……その落ち込み用は尋常では無いのですが……………。


 次、ですか。


 私の生きたい所を優先に? しかし、困りました。私が行きたい場所など…………。


 あ……一つ、経験しておきたいことがありまして………あの、恥ずかしいのですが………。


 この……か、『からおけ』と言うものを、やってみたいとは思っています。


 よろしいですか?あ、ありがとうございます。


 ………………………。


 中は意外と暗いのですね、どうやって歌えば良いのでしょう。


 さ、流石にマイクを使って歌うのは分かりますっ、ただ音楽を入れるのはどうするのか、分からなかっただけです。


 このリモコンに入力するのですか?『何を歌う?』ぇぇと。『紅天』で、はい。演歌です。


 ………………………。


 はい、お時間ですか?了解しました。八峡様。十分前だそうです。


『あと一曲歌うか?』……いえ、私は十分に堪能しました。


 からおけと言うものは良いものですね。また機会があれば………いえ、なんでもありません。


 さあ。


 行きましょうか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る