第4話 霊山禊編・学園生活三か月目
八峡様ッ。
私が分かりますか?
霊山です、霊山禊です。
―――あぁ、良かった………。グスっ……ほんとによかった………。
うぅ……泣きますよ!悲しみますよっ!任務で重傷を負ったと聞いて、危篤状態だって………。
心配したんですよ。死んでしまったらどうしようだなんて、そんな恐ろしい事を考えてしまって。
『相手が強敵だったから奥の手を使わざるを得なかった』?だからって、禍憑による呪いを変換するだなんて………。
八峡様の禍憑は確かに強力です。恩恵……いえ、寵愛と言っても良い。それがあれば、負ける事はあれど死ぬ事はないでしょう。
けれど、その禍憑を身体強化に変えれば如何に不死身であろうとも死に瀕しますっ!
何故その様な無茶をしたんですか………逃げても、誰も貴方を責めはしないのに。
………『ここで死ぬのなら、その程度の人間』?
なんですかそれは………その程度で良いじゃありませんか!!
貴方を失って涙を流す人間がどれ程いらっしゃると思うのですか。
少なくともここに一人、私が居ます。貴方を失って涙を流す人がここに居るんです。
もっとご自分を大切にしてください………死して勝つなど、この現代では美徳にもならないのですから………。
……………………。
少々………熱くなりました。
数々の暴言、お許しください。
けれど、撤回は致しません。
この言葉は偽り無きこと、それを撤回してしまえば、この想いも嘘になる。
ただこれだけは………生きて帰って来て下さって、私は心の底から安堵しました。
ご養生を、これにて失礼します………。
…………………………。
………八峡様、なんでしょうか?
………『悪かった』 いえ、そんな。
ただ喚き散らしたのは私です。八峡様が謝罪をする道理など………。
『俺の命を軽視していた』…………ですか。
いえ…………。
………この業界に足を踏み入れた時点で分かっていました。
命を賭けて命を救う。死と隣り合わせの危険な仕事。それでも私たちは戦い続ける。
それは誰かの為に、私たちの知らぬ人を守る為に、武器を担い、意志を築き、仇敵との邂逅を果たし、刃を交え命を奪い合う。
覚悟の上であり承知の上。八峡様は腹を括って任務に出たのでしょう。
私もまた、その様な覚悟であったと思います。
誰かの為に戦い、死ぬ事を覚悟していた。
けれど、私はまだ、誰かを失う覚悟を、していなかったのです。
今回で私はそれを知る事が出来ました。
八峡様。ありがとうございます。
…………え?
…………『それでも――――』…………っ。
や、八峡様、それは――――。
そんな事言われたら、私も、死ぬに死ねなくなるじゃありませんか。
八峡様の泣く姿など、私は観たくありません。
…………はい、これはもう、死ぬ事が出来なくなりましたね。
私も、八峡様も。
決して死なぬ事は無い。生き抜いてみせると。
約束、約束です。約束ですよ? 八峡さま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます