第2話 霊山禊編 学園生活1日目

 


 八峡様……八峡様ではありませんか。


 半年振りですね、お元気でしたか?


 私は……見ての通り、少々姿が変わってしまいました。


 クスクス、驚かれましたか?


 あの時よりも、少々醜悪さが目立ちますから。


 白純神社に関係する人間はこの通り色素が落ちていくのです。


 今はまだ髪の毛が白くなっただけですが、何れはこの体に呪いが蔓延し、身体能力が低下して劣化する事でしょう。


 ……………『一体、何を祀っていればその様になるのか』、ですか。


 私たちが祀るのは神ですよ。


 その神の前に、祟りが付く恐ろしいモノですが。


 昔話でもお聞かせしましょうか。高天原で一柱の神が暴れておりました。上位の神はその神を非難し、罰として地に追放します。


 しかしその神は地に落ちても暴れ続けました。神性を失い、悪性の高い不従万神まつろわぬかみとなりながらも、蹂躙をし続けます。


 けれど祟り神として悪名を轟かせた神の暴虐も長くは続きません。位の高い人間……私のご先祖様がその祟り神を治めるべく白純神社を建てたのです。


 霊山家の人間は禊祓……力の封印によって祟り神を鎮圧。神を祀る事に成功しました。


 その結果、霊山家の人間は神の呪いをその身に受ける事になったのです。平穏の地が築かれた代償に一つの呪われた一族が誕生してしまった。


 …………今は誰も彼も呪う様な神ではありませんが、白純神社でお祈りをすると祟りに見舞われるらしく、基本的にお祈りをする参拝客は居ません。ですが、そう言った伝承がある為に相手を呪うお願いを持つ方には中々好評の様です。


 但し人を呪わば穴二つ。


 呪いは何れ自らの身に返ってきますが。


 まあそんな訳で、私は先月辺り、正式に巫女として認められた為に禍憑を宿し、この八十枉津やそまがつ学園がくえんに入学したと言う訳です。


 ………はい、私がこの学園に入学した理由はこの禍憑を自在に操る為です、禍憑は体を蝕む毒ではありますが、その毒に含まれる神の成分を抽出して力を生み出す事が出来るらしいので。


 ………『時間があればやり方を教えてやる?』、と言う事は、八峡様も禍憑を宿しているのですね。


 八峡様、いえ、この場合は先輩、と言えば宜しいのでしょうか?


 親しみを込めて、八峡やかい様、とお呼びしたいのですが………。


『なら変わりに名前で呼ぶ?』、私は構いません。


 霊山りょうぜんみそぎ


 みそぎとお呼び下さい。


 ……………………………。


 ―――あぁ、この気持ちを何と言えば良いのか。


 少し、恥ずかしさがあります。


 それでは八峡様。


 この霊山禊、まだ若輩者ではありますが。ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。




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