呪術系ヤンデレに愛されて仕方がない

三流木青二斎無一門

霊山禊編

第1話 霊山禊編・出会い

 


 …………お気づきになられましたか。


 随分と怪我を負っていた様子でしたので、勝手ながら屋敷に運びました。


 私の名前ですか?


 私は霊山りょうぜんみそぎと申します。この白純神社で巫女として営んでおります。


 ここは神社の中? ―――いえ、ここは神社の離れにある住家です、来客用の寝室で手当てを施しました。


 え? 『随分と力持ちなんだな?』。くすくす―――。あぁ……いえ、すいません。


 私が運んだ訳では無く、神職の方々が運んで下さったのです。


 今は皆さま、夜のお勤めでいらっしゃらないので、留守を任された私が対応を務めさせて頂きます。


 ……見ず知らずの人間を泊めて大丈夫なのか? ご安心を、これでも私は巫女ですから。貴方様が悪い人であろうとも、負ける事は無いと思います。


『巫女は関係ない?』いえ、関係ありますとも、少なくとも、私も貴方様と同じようなものなので。


 その制服からして、八十枉津やそまがつ学園がくえんの生徒でしょう?私も来年、あの学園へ入学しますので。学園関係者であれば心配する事はありません。


 私の父も学園の卒業生でして、先程電話で会話をされてましたね。確か名前は……飫肥おび先生。と言う方でしょうか。


 電話の内容は『暫くはそこで休養していろ』との事です。病院に連れていくよりも此処の方が安心だとも言っておりました。


 病院へ輸送されれば、何があったのか根掘り葉掘り尋ねられますから、幾ら国家公認と言えど、一般人には秘密にしなければならない。


 秘匿機関と言うものは、何ともまあ世知辛いものですね。


 ………さて。


 私はここいらで失礼致しましょう。もしも御用があればこの鈴をお鳴らし下さい。


 食事が必要でしたらすぐ持ってきますが……大丈夫、ですか。


 でしたら電気は消した方が良いですか? ………眠気が来ないから良い、招致しました。


 では、また何かあれば。私は隣の部屋に居ますので、遠慮なく鳴らして下さいね。


 ……………。


 ……………………。


 …………どうかされましたか? 鈴の音が聞こえましたので。


 はあ。


 特に用事は無い、と?


 暇で仕方が無い?


 でしたら、何か読み物でも……。


 男の子が好む様なモノは無いですが、せめて暇潰しにはなると思いますので。


 ………ではこちらになります。


 少し痛んでおりますが、私の好きな作家様が書かれたものです。



 …………………。



 え?………寂しそう、ですか。


 ………来年この作家様が書いた小説が出るのですが、私はそれを読む事は出来ないので。


 ………くすくす、別に病気ではありませんよ。


 本格的に巫女として活動する為、自粛する、と言うだけです。


 活字は苦手ですか?


 でしたら、私が朗読致しましょうか?


 ご遠慮なさらずに、きっと内容を知って下されば、貴方様もお気に入りになると思いますので。


 ………あぁ、そういえば、貴方様のお名前は、なんと言うのでしょうか?


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