第二話 蓋然性の高いリスク
「我が社の優秀なエンジニアチームが社運をかけて開発した、究極の安全運転支援システムを搭載した新車を、今ここに発表致します」
そう宣言すると同時に、自動車会社の社長は車にかけてあった薄い布を一気に
その下から、流麗なラインが
「この車は、運転者の癖を人工知能が自動学習し、それをもとに最適な運転支援を行うようになっております」
社長が手元のスイッチを押すと、車両のハザードランプが点灯し、それと同時に社内のディスプレイも点灯する。
「しかも、そのデータはクラウドに保存されて、弊社の他の車両とも情報連携されます。つまり、同じような安全運転支援が、弊社のどの車両に乗ったとしても受けられるようになるのです」
そこで、車両を取り囲んだ報道陣から、
「ほう」
というため息が漏れる。
上々の反応ににやりと笑った社長は、
「それでは実際にシステムが稼働している状態での運転をご紹介いたしましょう」
と言いながら、運転席側のドアに取り付けられていた指紋認証機能付きドアロックシステムを解除しようとした。
しかし、解除されない。
何度も右手の人差指を指紋認証パネルに押し当てるが、どうしてもドアのロックが解除できない。
怒り心頭に発した社長は、車に対してこう叫んだ。
「おい、貴様! いったいどういうつもりなんだ!!」
すると、自動車の全機能を統括しているAIは、こう告げた。
「もっとも
それにより、その社長は自社の車両に乗ることができなくなり――同社の車は史上最高の販売実績をたたき出すことになる。
( 終わり )
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