「絢爛な石像」「ものぐさ店主」「深夜」

あるところに、ものぐさな店主がおったそうな。何をするにもざっくりと指示を出すと、細かいことはみな妖精に任せておった。


ある日のこと。いつものように妖精に任せておった精錬作業を一括で回収すると、倉庫から様々な種類のインゴットが少しずつ溢れておった。不思議に思ったが面倒だった男はとりあえず端数を注文に投げ込むことにして、それでも余ったぶんは適当に投げ捨ててくるように妖精に言いつけた。


するとどうじゃろう。その日に限ってインゴットの注文がほとんど出ておらぬ。折り悪く天気も悪くなってきて、どうやら嵐が来そうな様子。途方に暮れた妖精がふと道の脇を見ると、誰が何のために作ったのかわからんが石像が並んでおる。これ幸いと、お供え物のようにしたり頭の上に乗っけたりして、さんざっぱら遊んだ後に店に飛んで帰った。


その夜。雨風が強くなり、やがて雷も鳴りはじめた。件のものぐさ店主も眠りにつこうとしたが、不思議となかなか寝付くことができぬ。少しうつらうつらとしかけたとき、すぐ近くに雷が落ちたものとみえて、ものすごい音がした。慌てて跳ね起きた店主は、雨と風、雷の音に混じって、なにかを引きずるような音を聞いたような気がした。それはどうやらこちらに近づいてくるようである。やがて、声も聞こえてきた。耳を済ますとその声はこのように歌っているのである。


「道端の石像にインゴットかぶせた 妖精のの店はどこだ 店主の店はどこだ」


やがて音がものぐさ店主の店の前で止むと、何か重いものをどさどさと落とす音がした。そしてまた音は遠ざかっていく。

店主があわてて店の外に出てみると、店を丸ごと覆い尽くさんばかりの石の山の向こうに、かすかに山吹色に光る石像が見えた。




それ以来、店主は決してものごとを妖精任せにせず、きちんと指示を出すようになったそうな。


とっぴんぱらりのぷう。

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