「ロイヤルマント」「ドゥルハーケン」「エクスカリバー」
──それでは今回見事革命に成功された魔王さまのインタビューです。おめでとうございます。
「ありがとうございます。」
──立派な帽子ですね。
「いや、お恥ずかしい…本当は帽子ではないんです、これ。すっかり帽子だと思い込んでしまったものですから…」
──お似合いですよ。
「ありがとうございます。結局、残ったのはこれだけでしたね。」
──元は木こりだったと伺いました。
「ええ、革命を志す以前は木こりをしていました。山に入って木材を切り出す、地味ですが楽しい仕事でしたよ。何より、自分が切ってきた木が様々なものに姿を変えていくのを見るのが好きでしたね。」
──なぜ革命を起こそうと?
「ある日、ひょんなことからいつもと違う斧を手に入れたんですよ。すると何だか急に大暴れしたくなりましてね。いつものように山に入ってその斧を振り回してみると、すごい勢いで木が切れるんです。あの時の高揚というか、恍惚というか、全能感というか…」
──革命を起こせそうな気がした?
「いえ、そんなことは考えていませんでした。しばらくそんな生活を続けていたときに、運命の出会いがあったんです。」
──運命の出会いですか。
「ええ。あの日、私はいつものように山に入って暴れていました。すると、不意に目の前に人影が現れたんです。」
──その、斧を持って暴れてたんですよね。
「ええ。驚きました。しかしもはや止めようもなく、一瞬にして斧は人影にぶつかって…」
──ちょっと待ってください、そういう
「弾かれました。」
──……え?
「弾かれたんです。普通の斧の数倍の重さはあろうという、恐ろしい切れ味の斧が、いとも簡単に。」
──……。
「私も大変驚きました。と同時に、衝動が溢れてくるのを感じました。もっと暴れたい、この力をもっと試したいと。」
──それは…
「今思えば、あれも魔王の力だったのかもしれません。私は何度も全力で斬りかかり、ことごとく弾かれました。そして力を使い果たし、膝をつく私に、彼はこう宣言したのです。『私はこの島に革命を起こす。これはその手始めである。』と。」
──手始め、ですか。
「彼は手にしていた剣を地面に突き立てました。その瞬間、私が慣れ親しんだ山が、まるで別世界のように姿を変えたのです。辺りにはもはや木々はなく、あるのはただ焼け焦げた地面と、闊歩するモンスターだけ。そして、ゆっくりと周囲を侵食していきました。その日からわたしの生活もまた、だんだん変わっていきました。」
──木がなくなっていった。
「そうです。私は途方にくれて彼を探しました。生活を変えた責任をとってもらおうと。そしてついに彼を見つけ出したとき、彼は失意の底にいました。革命に失敗し、ほとんどすべてを失ってしまったと言いました。私の生活を変えてしまったことに対しても、もはやどうすることもできないと。」
──その、彼とは?
「…この『帽子』の、前の持ち主です。」
──何と…。
「彼からこれを渡されたとき、私は悟りました。これこそ運命であり、私が為すべきことだと。私の生活を元に戻すためには、私自身が革命を成し遂げ、再び奇跡を起こすしかないのだと。」
──あの、
「その日から私は、革命のために全てをなげうちました。それまでの生活で貯めたお金も、時間も、もっと何か大切なものもそうかもしれません。」
──ちょっと、ちょっと待って
「しかし革命を成し遂げた今、その全てに意味があったのだと、必要なものだったのだと、感じることができるのです。」
──ちょっと待ってください!
「…なんですか?」
──あの、生活を元に戻すのに、わざわざ革命を起こす必要はありませんよね?
「いや、革命を起こし、奇跡を起こす必要があったのです。」
──ですから、革命を起こさなくても、奇跡…天変地異は起こせますよね?そのほうが楽なのでは?
「…。」
──そもそも、土地を元に戻すだけなら、役所に申請を出せばできますよね。そのほうがずっと安上がり
「やれやれ、そんなに理由が知りたいかね。」
──何ですって?
「そんなに知りたいなら、教えてあげよう。いいかい、これは今回の革命で『唯一残った』ロイヤルマントだ。」
──マント?帽子じゃ…何を?や、やめ…
──うわーーーーーーーーっ!!!
「あれ…俺は何をしてたんだっけな?うーむ…思い出せんな…むしゃくしゃする…よし、一暴れしに行くか!」
──ふふ、革命に成功した魔王を取材して自らも革命を志す、おもしろい筋書きではないか。最初に帽子と間違われてかぶられたときはどうしてくれようかと思ったが、なかなかどうして、操りやすくて都合が良いわ…。
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