悠久の彼方へ
「来い」
ゴマがぺちん、と
宇宙を貫くワームホールの形成。それを通して、この神域へと招かれる者たちがあった。
「ん?」
「おや?」
「───わ、ぁ……!?」
「……!」
ゴマの復活を成し遂げた後はそのへんでブラブラしていたピヨとウーノ、そして『あざらし砲』の一射で全力を使い果たした最後のヤルダモ・リン、蒼炎の天使・セラだ。
「……フッ。あぁ、ここに辿り着いてようやくわかった」
「え? は? こ、ここどこ!?」
「どうなってんだゴマ? なんか明らかにやべーぞ」
「リン。適合者でない君がアルヴディアスを使えた理由。僕らは、神器の所有者ではあったけれど……それ以前に『
「……ほう! なるほど、そういうことでしたか!(爆速理解)」
「───君がそうだったんだな、リン」
「あ、ゴマ……。……待って、ということはこの場所って……!」
「さぁやるぞ、アルヴディアス!! セラ、ぶっつけ本番だ。細かい調整は頼む!」
「!? は、はいっ!」
『最後の
それはつまり、刻命界ン・ソと羅占槍タムクォイツェーンを除くすべての神器と、付随する七星の最強種の
「我が下に集え、輝ける魂たちよ!!」
〈
「生体認証完了、リン・メイシアを最高管理権限者に設定」
「ほぇ?」
「極星融合!」
「権限代行を要請……承認! 筐体拡張、再構築開始!」
〈───
星々の光が集まり、重なって、リンの腰にベルトと
「……え、嘘でしょ? なんで私の方に?」
「知らないけど、いいから早くゴマモルフォーゼして! ベルヒドゥエンが起きちゃう!」
「釈然としない……! あぁもうわかったわよ!」
バックル右部分のレバー『マイソロジー・スターター』を引くと、メインユニット『アザラシャス・コア』が獣の
眩い輝きが溢れ出したかと思えば、それはたちまち刃の無い剣の柄のような物体―――神性点火装置『ゴマフケイン』へと形を成す。
〈
「えーっと、ゴマ……。……
「は? ちゃんとゴマモルフォーゼって言え」
「うるさいわねこんな時に、別にいいじゃないそんなの―――あれ?」
「もふ?」
「なんかアンタたち……透けてない?」
「「「「「えっ」」」」
ゴマ、ピヨ、ウーノ、セラの輪郭が曖昧に明滅している。
それをリンが指摘した次の瞬間、ゴマフケインの起動点火スイッチに指が掛かり―――――。
〈───
彼らの姿が、強烈な閃光と化して消失した。
生じた光はたちまちリンの下へと収束し―――
〈
ビッグバンめいて迸るエネルギーの大放出と共に、リンの姿が変貌していく。
濡羽色の長髪に白銀が混じり、紅い瞳孔は爬虫類めいて縦に裂け、背中から噴き出した虹の炎が翼を象る。
ぴっちりと全身を包む
〈―――
その特徴は、つまり、
「……ぅ、つぁ―――!! 頭いったあぁぁい!!」
〈うーん狭い! 君の心が狭い証拠だぞリン!〉
〈あ、あの、マスター。もう少し詰めていただけると助かります……〉
〈おぉ、これは……アッハッハッハッハ!! なんと! まるで意味がわかりません、完全な
〈最終決戦で全部乗せ合体か! 坂本が居ないのは寂しいが……アイツの分まで暴れてやるとしようぜ!〉
「私の中で何が起きてるの!?」
5000兆匹の『あざらし』を贄として、6頭の最強種と1柱の神、さらには3体ともう1体と1人の
通常は使用者1名に集約される身体操縦の権利が、全員に分散している。
「と、とりあえずみんな落ち着いて! えっと、えと、こういうのは呼吸を合わせて……」
〈よっしゃあ!! みんな僕についてこーい!!〉
〈はーい、用意スタート〉
〈ケーッヒャハハハハハ!! 盛り上がってきましたねェ! 科学者失格やも知れませんが……私は今からデータを捨てますよォォーッ!!〉
〈エグザイル・リアクター、
「セラまでぇ!? こんな時くらい足並み揃えなさいよッ……だいたいこれ、私の身体だぞ! 好き勝手すんなお前らぁ!!」
────────────────────────────
悠久の時を生き、幾多の世界を巡り、あらゆる宇宙に命を芽吹かせてきた大神。
無限に広がる
痛い。
痛みだ。
神たる我、唯一至高の全能者たるこのヴァハトマ・ベルヒドゥエンが、痛みを感じるなどと。
「─────赦さぬ」
矮小十把、塵芥の如き不出来な獣風情に───。
「赦して、なるものか」
鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の命を根絶やし、万象一切を悉く無に帰そうとも。
たとえ己が全知全能のすべてを擲ち、後に何の力も残らぬとしても。
「死ね……! 量子の欠片すら残さず、無限小の無に還るがいい―――」
もはや神なる威光など不要とばかりに、ベルヒドゥエンは自ら権能を捨てた。
全能たらんとする者は、全能ならざる者に堕ちることもまた可能でなくてはならない。
「否。否、否! 誓うぞ。貴様だけは、この手で必ず殺す!」
手放した神としての力、世界に対する権利が、純粋な殺意へと変換されていく。思うがままに宇宙を創造し、また時に破壊するための全能性が、ただ一個の存在を滅ぼすべく収束する。
限界を超えて凝縮された神威は四肢持つ人型を象り、多元宇宙の全土を制するに足るだけのエネルギーを一点に留めた。
かつて黄金に輝いていた躯体は、怨嗟の黒き炎に巻かれ煤けたが、それでも未だ壮麗なる白亜―――破邪の聖銀に煌めいている。
全身に血管めいて浮かび上がった深紅の
武具の類は持ち合わせず、されどその顎と爪、鎧めいた外骨格の肩や二の腕、膝や踵に生じた
「終わりの
昆虫と竜の混合物じみた異形の頭部、6対12個の眼球から赫怒と憎悪を迸らせ、新生せし破壊の神が咆哮した。
────────────────────────────
事象の地平線の遥か彼方、無限無尽に広がる多元宇宙の中心にして深奥たる特異点にて。
2柱の神の、"必殺"の一念を込めた拳が、衝突した。
相反する意志、相容れぬ摂理と法則そのものがぶつかり、互いを喰らい合って暴発する。余波ひとつで銀河が木端微塵と化すような、極大のエネルギーの乱流が巻き起こる。
「……いや痛い痛い痛い痛い痛い!! 無理だってこんなの死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!!」
〈まだ死んでないからセーフ!! あっピヨそこ邪魔っ、どいてよちょっと!〉
〈ふざけんなこれ以上詰めれるかよバカ!! ただでさえウーノの尻尾が目に刺さってんだぞ!〉
〈おっとこれは失礼。まぁそんなの言い出したら私なんて、だいぶ不恰好なことになってるんですがね? このままだと性犯罪者として通報されそうな感じですよ。ごめんなさいねぇセラ〉
〈いえ、火急の事態ですので……ふみゅっ。……またですか、マスター? そのパーツ、あまり何度も刺激されると困るのですが……〉
この期に及んで、ボンゴマ・ファミリー一行には協調性がなかった。
星をも砕く拳撃と斬撃、閃光が乱れ飛び、一時の失策が死に繋がる極限の戦闘の最中で。
「あーっ……! もおぉぉ!! 一旦みんな黙って! ちゅうもーく!!」
〈何だ貴様偉そうに〉
「一番偉そうにしてるあざらしがほざくな! いいから言うこと聞きなさいっ」
〈エ~? 出来んの~? お前に~?〉
「『決闘部』副部長ナメんじゃないわよ! ピヨ、あんたは
〈うん? あぁ、それもそうだな〉
「ウーノは索敵と解析!
〈なるほど、道理です。従いましょう〉
「セラは引き続き、アルヴディアスの機能調節と出力制御に集中! まだいけるよね?」
〈……了解!〉
〈は~~~~~~~~~???????????? ……ちぇっ! 何だよみんな、ボンゴマのボスは僕なのに……〉
「
―――すぅ、と。
四方八方に引っ張られ、姿勢を保っているのもやっとだった身体から、リンはあえて力を抜く。
各
そのまま、ゆっくりと目を閉じて、
「好きにしなさい。いつも通りよ」
一瞬の沈黙があった。
宇宙から誰も居なくなったような、徹底的な静寂が。
「……鉄火場で居眠りなど! 侮るのも大概にしろ、獣風情が―――」
―――迫り来る左拳に合わせて放たれた右拳のカウンターが、ベルヒドゥエンの顔面を完璧に撃ち抜いた。
「グッ……!? 貴、様ァ……!」
「人間の身体の操縦、私が教えてあげるから―――オッケー、ここからは僕に任せろ!」
リンの右目に新たな光が灯る。銀河の高精細写真を思わせる、宝石箱めいた星空色の瞳。
土壇場でついぞ
「おっりゃあぁ!!」
「カアァッ!!」
再びベルヒドゥエンの拳を躱し、一打。
すると、殴った側の拳の方が砕けた―――如何にゴマとの融合によって神域まで引き上げられようと、ベースとなっているリンの肉体は、真なる上位者のそれほど頑丈ではない。
〈なるほどな、こうか!〉
だが、不死鳥の加護が負傷を即座に治癒する。
〈面白い……! まだ最適化の余地があるとはッ〉
〈解析結果を統合、筐体再構築!〉
否、単なる再生ではない。
少女の細腕が生まれ変わる───より強く、より堅く、より敵を砕くに適した形質への超回復。
「如何に姿を変えようが同じこと!」
ベルヒドゥエンの二の腕に備わった刃が閃く。
時間と空間を切断することで速度は光を超え、距離を無視して必中する絶死の魔剣である。
「そいつは……どうかな!」
刹那、鎧の如く変生した右腕が迎え撃つ。
時間と空間を砕いて極超光速に達する剛拳が振り抜かれ、次元を食い破りながら魔剣と激突した。
「チェアァァ!!」
「まだまだぁ!!」
宇宙を割る破壊神の刃が、舞い踊るように戦うリンの五体を幾度となく刻み苛む。
その度に不死鳥の炎が少女を癒し、賢者の叡智と天使の加護が姿を作り変える。
絶えず乱れ、狂い続ける因果の流れを読み取り、時空の狭間に揺蕩う神の本質―――存在の中核へと攻撃を届かせる。
肉体を賦活し、あるいは時間を巻き戻し、またあるいは被弾したという事実そのものを宇宙の歴史から抹消することで、真なる神はありとあらゆる傷と病毒を即座に治癒する。
常に全力、最初から最後まで全身全霊。どちらかがどちらかを喰らい尽くすその瞬間まで―――ただ戦意の挫けぬ限り、負傷によって能力が落ちることは無い。
ベルヒドゥエンの爪がリン/ゴマの半身を千々に裂き抉った。リン/ゴマの拳がベルヒドゥエンの腹から下を爆散させた。
虚空から再生したベルヒドゥエンの蹴り足、その先端に具わる鎌状の生体カッターが少女の鳩尾を貫通する。それを叩き下ろされた両拳が粉砕し、反撃のソバットが破壊神の首を刈り取る。
間髪入れずに放たれた貫手がリン/ゴマの左肩に突き刺さると、反撃の手刀が蒼い光の剣と化して伸長し、ベルヒドゥエンの胴体を袈裟懸けに両断した。
バラバラになった五体を瞬時に復元したベルヒドゥエンが、裂帛の咆哮と共に無数の炎の槍を解き放つ。
至近距離から串刺しにされ、燃え盛る呪いの炎に全身を焼かれながら、それでもリン/ゴマは前に出た。
星砕きの拳を敵の脳天に叩き込み、すぐさまもう一度顔面を打ち、横腹を蹴りつけ、衝撃に吹き飛ぶ暇すら与えず胸板を掴み上げて頭突きを見舞う。
さらには、崩れ落ちたベルヒドゥエンの背筋を踏み潰さんと足を上げるが―――刹那、破壊神の姿がその場から消えた。
一瞬にして血煙と化すまで切り刻まれたリン/ゴマが、不死鳥の炎と共に蘇る―――と同時、流星の如く到来したベルヒドゥエンの飛び蹴りに心臓を穿たれた。
黄金色の光、否、"力"という概念そのものがベルヒドゥエンの右腕に収束する。
それは破壊神の手中で巨大な
多元宇宙の隅々にまで轟く大音響と共に、空間それ自体が赤熱して砕け散り、言語に絶する強大無比の暴力がリン/ゴマをひたすらに打ち据える。
超再生の暇すら与えぬ破滅の連撃。
無尽蔵にも思えた、実際に本来ならば無限無窮であったはずの神の力がたちまち底を突き、あえなく霧散していく─────。
────────────────────────────
「おや。これは───しまりましたね」
最初に、ウーノの気配が消えた。
「グェー死んだンゴ」
次に、ピヨの炎が消えた。
「っ……! ……申し訳ありません、マスター、リン様……わたしは、ご期待に───」
セラの光が、少しずつ遠ざかっていって。
「……なんで、よ」
なんで。
どうして。
ここまでやって、届かないの?
「───なぁ、リン」
「絶望せよ」
「僕たちはさ、どこまで行っても神様じゃないんだ。……今になって言うのも変な感じだけど」
「恭順せよ」
「まぁ、つまりはね……辛かったら、諦めてもいい。逃げたっていい。折れたっていい。今日のところは……今のところは」
「地に伏し、己が無力を知れ」
「でもね」
「無為。無駄。無価値。すべては無意味だ。諦めろ」
「明日か、そうでなくてもその1秒あとで───少しでも、『あの時こうしていれば』と思えたなら」
「三千世界から消え去るがいい」
「泣いてるやつの前にだって、太陽は昇ってくるよ。いつだって世界は前に進むんだ。だから」
「─────死ね!!」
「まずはもう一度、息をするところから始めてみない?」
────────────────────────────
賢者の心眼を失い、不死鳥の癒やしを失い、天使の加護を失っても。
「───まだだ……」
事象の地平に、それは立っている。
奇跡に二度目は無い。虚数の悪魔による復活の邪法に次は無い。
「……まだ、だ。まだ……まだ終わってない」
「哀れな……」
だから、それはここに立ち続ける。
「もはや掛ける言葉も見当たらん」
「勝つのは……俺だ。誰が相手だろうと、俺は負けん」
吹き上げる気炎に反して閉じたままの左目は、現在の肉体の主が死に瀕していることを意味する。
四肢は折れ曲がり、夥しい鮮血を垂れ流し、立っているのも不思議なほどの満身創痍。
「……あぁ。そうだ……お前よりも、俺の方が強い。俺の方が強い。俺の方が強い。俺の方が強い!」
「つくづく愚かしい───」
仮にも神の域に達した存在であるそれは、今や肉体の損傷を修復するだけの力さえも捻出できない。
それでも、まだ。
「お前よりも俺の方が強い。俺の方が強いからだ。俺の方が重いからだ。俺の方が疾いからだ。俺の方が巧いからだ。俺は強い、俺は負けない、勝つのは俺だ……だから俺の方が強い」
どうして。
何故。
なぜ、そこまでして─────。
「俺は俺であるが故に、絶対にこの世で一番強い」
『あざらし』。
始まりの地たる青き星より駆逐され、永劫にも思えるほどの長きを、冷たい真空の地獄で彷徨った古代種―――
桁外れの細胞分裂速度による再生力・増殖力と、それに見合う超攻撃的な代謝要求。有機・無機を問わず、如何なる物質も分解して取り込む捕食細胞膜。絶えず結合と崩壊を繰り返し、巌めいた堅牢性と水のような流動性を併せ持つ高分子筋肉組織。エネルギー利得の無い環境に置かれても、ある種の乾眠によって数十万年の時を渡る自己保存能力。全細胞・全個体が量子波ネットワークによって繋がった"個にして群"なる巨大統合知性。
過剰な、かつては確かにひとつの
闘争と破壊の星の下に生まれ落ちた者。殺し、奪い、勝ち取る
友愛、義憤、歓喜、自負、快楽、憎悪、矜持、仁義、幸福さえ───もはやそれの眼中にはない。
あらゆる意志と感情すべてを超越する原初の想念により、完全に純化されたこの状態こそが、アリュゾホート・マグサリナス・ゴマ=ゴマフの最高到達点。
「殺せるものなら殺してみろ!!」
「貴様───」
「俺は不死身の……私はっ!! 宇宙最後の人類、リン・メイシアだ─────ッ!!」
そして再び、七色の光が世界を覆った。
炸裂する鉄拳。反動で噴き出る血飛沫。
それでも、まだ、身体は動いている。
「ッ……! 尚も足掻くか! 無駄な真似を……!」
「無駄なもんか!! みんなが……僕に! 私に! 最後まで生き残って、戦って欲しいって! 願ってくれたんだ!」
「─────ならばああァァァァァァァッ!!」
ヴァハトマ・ベルヒドゥェンの放つ神威が、多元宇宙全土の歴史にも空前絶後の域にまで膨れ上がった。
限界を超えた神通力は、既に放棄したはずの全能者としての聖性をも一時的に復活させ、迸る閃光は一点の曇りも無い黄金を帯びる。
「───グローリア、六肢六翼六眼の
ベルヒドゥェンと一体化した神器、刻命界ン・ソがこれ以上ないほど激しく廻る。
同じく一体化している羅占槍タムクォイツェーンに蓄えられたあらゆる宇宙の歴史、世界の記憶を吸い上げて、現実性を焼き尽くす終焉の熱量へと変換する。
一条一条が宇宙を砕く雷光が無数に吐き出され、2柱の神が芥子粒に見えるほど巨大な火球と化し───破壊神の眼前、
「万物滅尽、万象滅相───
これこそは、全能者ヴァハトマ・ベルヒドゥェンの真なる最大武装。
「―――
それに、リン/ゴマが応じる。
呪文、あるいは祝詞の詠唱。ここに我ありと三千世界へ謳い上げ、自らの全力全開、全身全霊を喚起する超次元の咆哮。
「火花、紫、絶対零度。黒き死の羽、箒星の螺旋、天元射落とす愚者の鼓動よ───我は暁に咆える者なり」
何処にそれほどの力を隠し持っていたのか。もしくは、とうに精魂尽き果てて尚、如何にしてそれだけの力を絞り出しているのか。
理屈を超えた、否、摂理すら捻じ伏せる無窮の
「「ハイパーウルトラアアァァァ……!!」」
突き合わせた両手、掌の内に太陽を呼ぶ。
その灼熱は、宇宙を焦がして灰に還す滅びの光線であると同時に、躍動する未来を照らす命の源泉でもあった。
「100倍ゴッド!!」
「超ッ!」
「限界突破!!」
「ビッグバン―――」
全能の神をも裂き喰らう叛逆の牙にして、閉塞した時空に風穴を穿つ砲。
「「あ・ざ・ら・し……破あああああァァァァァァァ―――――ッ!!」」
力と力が激突する。
至る所に偏在し森羅万象を司る
何者をも全容を把握し切れぬ無数の並行宇宙、幾重にも連なった
「……ハハ───は、は、ハハハハハハ!!」
やがて───大神の劫火を前に、徐々に押し潰されていくあざらしの光線。
決着は誰の目にも明らかで、
「我の勝ちだ、愚かなる獣ども! これぞ創世の劫火ッ! 真の神なる権能! 抗えまい、打ち砕けまい! 貴様らが相手取るは無限無尽の三千大千世界、在るべき宇宙全土の重みと知れッ!! たかだか矮小な羽虫と猿、比べるべくも───」
だから────。
「いいや」
これは単純な算数の問題である。
「………………何?」
「死ぬのはお前ひとりだ」
ベルヒドゥエンが無限大の多元宇宙すべてを焼却して得た熱量を、ただ一点に向けて収束させた今。
リンとの融合を解除し、渾身の最終奥義を隠れ蓑にしてその喉元にまで迫ったゴマ=ゴマフの迎撃に割ける
「俺の―――俺たちの」
「貴……ッさ、まァァァ! ゴマ=ゴマっ」
「―――勝ちだアアアアアァァァァァァァァァ――――――ッ!!」
そして、たった一匹のあざらしの
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