アニマルバースどうぶつずかん その①「あざらし」

◇あざらし(ゴマ星人)


 むせかえるほどへいわなわくせい、『ごまのほし』にすんでいるいきものです。

 たいちょうは40センチくらい、おもさは300グラムくらいですが、これよりとてもおおきかったり、ちいさかったりするものもいます。うまれたばかりのあかちゃんは、おとなのはんぶん、20センチ・150グラムくらいです。


 かおにあるおおきいはなと、ももいろのほっぺたがとくちょうです。あとでくわしくせつめいしますが、あるりゆうからくちとみみはありません。むねに2まい、しっぽに2まいのヒレがあります。おおむかし、いまのすがたにしんかするまえは、しっぽではなくこしのあたりにヒレがあったようです。しろいけがわはとってもふかふかですべすべです。


 せいかくはようきであそびずきです。ふだんはおだやかですが、とてもくいしんぼうなので、ごはんのじゃまをされたときはすごくおこります。ぜったいにあざらしのしょくじをじゃましてはいけません。


[ゴマ星人は常軌を逸した細胞分裂速度と、それに見合う極めて貪欲な代謝要求を有する。つまり――休眠状態であれば話は別だが――奴らは飢えているんだ。常に。いいか、奴らと戦う時は手加減も躊躇もしてはいけない。生半可な傷は一瞬で再生する。お前が食い殺されるより先に、確実に殺せ。]


 つぎからは、あざらしのからだのことをひとつずつせつめいしていきます。


・つぶらなおめめ [ラプターズ・アイ]


 かおにある2つのめです。しりょくは1.5くらいで、あるていどはいろがわかるものとかんがえられています。


[ゴマ星人の眼球は非常に複雑な積層構造を形成しており、1つの目の内部に20個近い複眼を備えているような形態となっている。硝子体や水晶体といった部位の組み合わせで視覚特性を切り替えられるものと見られ、紫外線や赤外線を認識できるほか、特に動体捕捉能力に関しては極めて高い精度を発揮する。瞼は無いが、代わりに半透明の瞬膜で覆われており、これは外観によらず一定の硬度を有している。銃器での狙撃による目潰しに対抗するために進化した機能のようだ。]


・おっきなおはな [チェイシング・ノーズ]


 かおにあるおおきなはなです。よくいわれるたとえでは、50メートルプールにまぜた、たった1てきのオレンジジュースのにおいをかぎとれるほど、きゅうかくがすぐれているそうです。

 ちなみに、いまはまちがいだとわかっていますが、むかしはこのおおきなはなをつかってえさをたべるとかんがえられていたそうです。


[鋭利な嗅覚を備えた鼻。捕食動物としては凡庸なスペックではあるが、実際に相対した時には警戒を怠りがちになってしまうポイントだ。奴らはどんな状況下でも敵対者に容赦しない。上手く身を隠したつもりでも、決して油断してはならない。]


・ももいろほっぺ [ソウル・サーチャー/クォンタム・シンクラー]


 ももいろ、ピンクいろ、さくらいろのほっぺたです。めのしたあたりに1つずつあります。はっきりしたことはわかっていませんが、まわりのおんどなどをかんじとるためのセンサーだとかんがえられています。

 また、わたしたちにはきこえないとくべつなことばをつかって、おなじあざらしとコミュニケーションをとることもできます。


[熱や電磁波を感知する複合センサーだ。ヘビやサメなどに見られるロレンチーニ器官の一種と考えられる。精度もだが、何より感知範囲が並外れており、強力な個体ともなれば数㎞先から飛来するミサイルを察知して回避に移れるほどだ。ゴマ星人に奇襲は通じない。後は、どんな大混戦でも一糸乱れぬ連携を取れるっていう量子波ネットワークの要でもあるな。奴らにうっかり出くわしてとりあえず死にたくないって状況なら、この頬を狙うといい。どうせいつかは再生しやがるが、少しの間は動きを止められるはずだ。]


・もふもふけがわ [ターミネート・スキン]


 ふわふわのしろいけがわです。


 あざらしのひふはとくべつなこうぞうになっていて、さわったものをくちでかみくだいたようにこまかくして、からだのひょうめんでえさをたべます。

 でんぱでコミュニケーションするほっぺたもふくめて、こういったからだをもっているので、(いろんなかんがえがありますが)あざらしはくちがなくてもこまりません。


 けにもひみつがあります。わたしたちがきいている『おと』とは、ものがうごくときのくうきのふるえをかんじているものなのですが、あざらしはみみではなくけがわでおとをききます。1ぽん1ぽんのけで、くうきのふるえをキャッチしているんですね。


[ゴマ星人が持つ最大の特徴であり、最大の脅威だ。詳しい理屈を説明すると長くなるが、要するに奴らの皮膚は常に大小無数の牙と口が剥き出しになっている状態であり、下手に触れようものなら俺たちの手や武器の方が食い千切られる。攻防一体の鎧ってわけだ。ふざけてる。]


・ごまっする [カタストロフィ・フレーム]


 あざらしのからだは、さわるとわたのようにふわふわしています。ふわふわのものがあぶないわけありません。よろしくおねがいします。ありがとうございます。


[皮を剥いたところで安心はできない。その下には、奴らのルーツとされている『細胞X』を基調とした高分子複合体の塊が眠っている。固体と液体の中間のような筋肉組織で、指で軽く押すくらいなら綿のような感触だが、強い衝撃を加えた瞬間に超硬化して軍艦の砲撃すらとおさない。軽率に伸びたり縮んだりすることからもわかるように、奴らには骨格が無い。一定の刺激下で硬化するというこの筋肉の存在が故に、自らの動作に合わせて"最適な骨組み"が勝手に形作られるからだ。半液体という性質上、切断には弱いが、強力な個体ほど筋繊維の密度も高くて容易には切り裂けない。再生能力の存在を思えば、慰めにもならない弱点だな。]




 もはや戦況は最悪だ。奴らの声が迫ってくる。今に俺も奴らの腹の中に叩き落とされるんだろう。

 だが、ただでは死んでやるものか。俺は必ず辿り着いてみせる。

 奴らを創った全ての元凶、ヤルダモの真意を知らなければならない。どうして第11銀河が滅ぼされなければならなかったのか、それを知らなければならない。


                     俺が


必ず



[記録終了]

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