7話 帰還

 急に酷く視界が歪み、猛烈な吐き気が僕を襲い、反射でぎゅっと目を閉じる。

数十秒ほど経ったくらいで吐き気が止み、声が聞こえた。


「あ、良かったギリギリセーフってやつだね。おかえり」

「はあ、やっと帰れる。なんにせよ、よく頑張ったなぁお前」


聞き覚えのある声に目を開けると、俺のいた病室に戻って来ていた。

ノミでもわかる怪異辞典と書いてある本を片手に持ったパンダとイカが出迎えてくれる。


「ただ、いま?」


 正直、いろんなところをワープしすぎたせいでここが本当に元の世界なのか疑ってしまう。


「そんな身構えてキョロキョロしなくても、ここは正真正銘現実の世界だよ」


心を読んだように答えたパンダは、読んでいた本をパタンと閉じて続ける


「で、どうだった? 無事帰ってきたってことは、戦いに勝ったってことだと思うんだけど」

「無事では全然なかったですけどね。あと、勝ってないですよ、遊んだだけです」


花子もそう言っていたし、そのまま伝えることにした


「へぇ......そうだったんだ、これは驚いた」

「え?」

「いやぁ、君の怪異は戦うことが能力を行使するために必要な絶対条件だと思っていたからさ」


詳しい話はまた聞くよ、そう付け足してベッドに腰かけていたパンダは立ち上がった


「じゃあ、用も済んだし帰るよ」

「え、あ、はい」


 そう言ってパンダは部屋の扉へ向かう。


「あっお前、能力を大っぴらに使うなよ? すぐ殺されるからな」

「それはもう、はい。色々ありがとうございました」

「おう」


イカも扉の前に合流したところでパンダが振り返った。


「それじゃあ、協力の件についてよろしくね!その時になったら迎えに行くから、それまで・・・死なないでね」

「わ、かりました?」

「よーし良い子だ」


 返事を聞いた二人は病室の引き戸を開ける。

開いた戸の奥には何やら駅のようなものが見えるがこれも、怪異能力なのだろうか?


 振り返ることはせず、駅に到着したであろう電車に片手を手をひらひらとしながら乗り込んだ。

暫くもしない内に二人を乗せた瞬間に電車が発車する。

駅がどんなものかが気になって直ぐにベッドにから降りて戸へと向かうが、駅のホームの看板がギリギリ見えたとこで閉まってしまった。戸に手をかけて開けると当たり前のように駅なんか無く、病院の廊下があるだけだった。


「きさらぎ駅・・・って書いてあったな」


 聞いたこともない駅だ、後で調べてみよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

carnival~怪異都市~ 木枯月扇 @tugumi124

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ