6話 おままごと
鳥居に吸い込まれてから少し経った。
怖くて閉じていた目を少しずつ開く。
「まぶしっ」
暗闇に長い事いたのもあり、眩しさに眉間を寄せる。
段々と慣れてきて周りを見渡すと、滑り台やブランコなどの遊具のあるただの公園みたいだ。
そして、少し先には小学生くらいの少女の姿があった。髪はショートヘアーで赤い着物を纏っており、着物に似合ったおとなしそうな印象を持たせるような子だ。
何をするでもなくただ佇んでいる。
「あの!ここってど、うわっ」
取り敢えずその場から話しかけようとしたら、少女が急に走ってきた。
驚くと同時に、地面に尻餅をついてしまった。
少女は何を言うでもなく、僕を無表情で見下ろしながらじっと黙っている。そんな冷ややかな視線を送られても変な趣味は無いので興奮とかはしていない。断じてしていない。
「・・・話せる?」
立ち上がり、ズボンの汚れを払い、出来るだけ刺激しないよう少女の目線までしゃがんで尋ねる。
コクリ。
少女の首が縦に揺れる、どうやらコミュニケーション可能なようだ。
「僕は、どうすればいいかとか・・・わかるかな?」
できるだけ優しい声で尋ねる。また少女はコクリと首を縦に揺らし、今度は口を開いて話し始めた。
「ここで、私達と遊んでくれればいい」
「遊ぶ?別に構わないけど、それだけでいいの?」
「うん」
突如少女の影が立体に伸び、同じような格好をした少女があと3人出てきた。
「えっと・・・なにして遊ぶの?」
増えたこと自体はもう夢の空間ということであまり驚かない。むしろ楽しく遊んで終われるなら願ったり叶ったりだ。おままごととかでも喜んでやろう。
「おままごと、しよ」
「喜んで!」
即答だった。
やっぱりそういう年頃、かわいい遊びだ。YESの返答に、ずっと無表情だった少女たちの顔に花が咲く。眩しい、やっぱり女の子は笑顔が一番だと実感させられる。守りたい、この笑顔とはこのことか!!
「設定はどうする?僕は何役やればいいかな?」
久しぶりの感覚にわくわくしてきたこともあり、少女よりも先に話を進める。
少女はじゃあ・・・と、口笛を三回吹いた。
「え?」
増えた三人の少女が地面に消え、一つの影にまとまる。その後、消えた地面から出てきた影に言葉を失った。
「お兄ちゃんはこの子の相手役ね」
冷汗が止まらない。体も徐々に震え始めた。
口笛と共に現れたのは、ごつごつした皮膚に鋭い眼光、いかにも強そうな足腰。なにより怪物の様な頭が三つ。パンダが言っていた三つ首の化け物そのものだった。今にも食べられてしまいそうだ。
「・・・これ?」
「うん!」
今までにない極上の笑顔で答える少女。
「公園の遊具は自由に使っていいからね!」
「それでどう戦えと!?」
こうして、三つ首の化け物との
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