三つ首の怪物 ③
「自分の怪異のことも知れたし、次のステップだ」
そう言うと、パンダはポケットから何やら編み込まれたミサンガの様なものを取り出した。色は紫で、僕の趣味の色ではない
「これはミサンガ・・・ですか?」
「お、アッタリー。良い勘してるじゃん」
「へ、へへ」
急に褒められ、照れ隠しに頬をポリポリと掻く
「甘やかしすぎっすよ、そんなん大抵のやつがわかるでしょうに」
そっぽを向いていたイカが突っ込みを入れてくる。・・・中二病の癖に。
「えー別にいいじゃん。何?嫉妬?」
「え、嫉妬なんですか?」
「違う!!あとお前も乗っかるな!」
「痛っ、なんで自分だけ」
軽くデコピンされてしまった。
「当たり前だ、誰が中二病だって?」
「え、また勝手に出てました?」
本当に厄介な怪異能力だなこれ
「いや、今回はただ思われた感じがしたから」
「おい!!」
なんて勘が鋭いんだ、この中二病は・・・。
その後、同じ流れでもう一発デコピンを食らった。
「で、このミサンガなんだけど」
「あ、そうでしたね。はい」
「なんとただのミサンガじゃあ無いんだ」
ノリが海外テレビショッピングみたいだ。
まあ、このタイミングで普通のミサンガを出されても困ってしまうけど。
見た感じ特に変なところもなさそうだ。いや、これは・・・
「まさか、封印系の代物ですか?」
ソワソワとした感情を抑えつつ聞くが、やれやれといった感じにパンダが身振りする
「・・・少年、君も大概中二病だね」
「うっ」
【中二病】という言葉のナイフが僕に突き刺さった。多分これ血が出てるわ。
「んー、封印系ではないけど、確かにこれで君の怪異能力の暴走は終わる」
「やっぱり!じゃあそれ早いとこお願いします!」
「急かさない急かさない、せっかち君は嫌われちゃうよ?ほら」
パンダの手からミサンガが垂らされる。
そんなアイテムがあるなら、会って最初に渡してくれればよかったのに。そう思いながらも手を伸ばして受け取ろうとする。
手が空を切る
ミサンガが僕の手の中に納まる直前パンダが手をミサンガごと引っ込めたのだ
「え?」
なにこれいじめ?
「危な。ごめん、伝え忘れてた」
結構重大なことだったらしく、ふーっと強めに息を吐いた。
「このミサンガ着けるだけじゃないんですか?」
「うん、このミサンガを着けた瞬間に君は夢の中のような世界に飛ばされる。そこで何かしらあるからそれをうまく対処してね?」
「・・・そんな大事っぽいこと伝え忘れたんですか?ていうか対処できなかったら?」
「ごめんごめん。で、対処できなかったらね、」
パンダの声のトーンが少し低くなる
「君は二度と目を覚まさない」
冷汗が額から出る。
「それマジで言ってうわっちょ」
僕が真偽を問いただす前に「えいっ」と無理やりミサンガをつけられた。
途端、体が軽くなるのを感じる。
視界も真っ暗だ。
「目的を忘れないで、時間気にしてね!いってらっしゃい」
パンダの優しい声とともに僕の意識は完全に暗闇へと堕ちていった。
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