第8話 二人の監視

 本当に意味がわからなかったの。あと、捨てアカからの謎のリツィートだったかダイレクトメールも同時に入っていて。中身は藤井さんの中傷ツイートや住所特定情報、過去の悪事とどこまで本当かわからないスポーツ新聞だか週刊誌みたいな内容。


「急にブロックされていたはずの人からフォローされ、意味がわからない不気味なダイレクトメールも来た。訳がわからなくて怖い」とつぶやいたら速効で本人からリプが来たの。それも怖いよね。二十四時間監視しているのかしら。


『もう一つの方はわかりませんが、怖がらせたのなら申し訳ない。私もあなたが怖いです。でも、今度のオフ会に一緒に参加する身として理解し合いましょう』


 今度こそフリーズしたわ。会社のお昼時間だったから、周りから「顔色悪いわよ、大丈夫?」と声を掛けられたくらい青ざめていたと思う。


 私が怖い? なんで? ブロック解除のお願いしなかったから敵のまま? 締め切り日まで参加者チェックしたのに参加? 慌ててオフ会のページを開いて参加者リストを見たら「藤井五月」の名前があったの。


 ずっとチェックしていて確かに無かったはずだから、四条さんに聞いたのよ。敵視されている云々はこの人は知らないから「締切日より人数が増えていてリストになかった藤井さんの名前がありました。何かあったのですか?」って。


 そうしたらお返事が「オフ会のことを彼が後で知って飛び込み参加のお願いが来ました。この投稿サイトの人間関係は本当に複雑で彼を恐れる人も多いのですが、断ると彼の性格上ややこしくなるので参加を認めました」と。

 ある意味、彼も板挟みだったのね。


「わかりました。直前だからキャンセル料の絡みが発生するとご迷惑かけますから割り切って参加します」とだけ返信してね。こういう返事したから何日前か覚えてないけど本当に直前だったと思うのよね。そこにねじ込み参加ってわがままで非常識な人だって思ったわ。


 これで彼は複数の人を敵視して常に監視している人とわかって恐怖が増したわ。私も監視対象だったのよ。執筆しながら監視なんてできるものかしらね。もしも兼業だったら上司に怒られるし、でも専業としては三冊目が出るとしても、まだ実績は専業名乗れるほどできてないし、でも実家が裕福なら専業も可能だし、その辺は未だに謎ね。


 掲示板は毎日のように二人の悪口だった。「アカハラの部屋」のスクショもユダによって貼られることも度々。もう完全に相互クラスタと決めつけられていてね。

 不信感もあったからTwitterに「やましくないのに所属しているサークルにクラスタ疑惑かけられている。李下に冠を正さず、瓜田に履を納れずとも言うし退会しようかしら」とつぶやいたの。


 そしたらすぐにダイレクトメールが来たわ。なんなの、この速さ。


「Twitter拝見しました。今なら穏便に抜けさせてあげます」


 ゾワッとしたわね。普通、退会する時に「穏便」なんて使わないでしょ? ヤクザか暴走族を辞める時大変というけど、今私がいるのは文芸サークルよ? 何がどう穏便なのか分からないけど、この人とも最低限の関わりにした方が良いと思って。


「いえ、皆さんの意見交換は参考になるので引き続きROMだけにします」とお茶を濁して返信したわ。


 モヤモヤしながらも、オフ会の日はやってきたの。

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