第3話 ワナビ脱出を試行錯誤する日々
その一方でWriteRead内のコンテストに応募していたの。短編ばっかり書いてたから長編を書くのはしんどかったわねえ。時には苦手な異世界などのジャンルに挑戦したり。
どうだったかって? そうねえ、書けなくないけどなんかしんどかったわね。ほら、テンプレのチーレム展開はおばちゃんだからか邪道に感じたし、ジャガイモ警察やトマト警察やら架空のファンタジーなのに細かいところを突っついて「おかしい!」って言う人達が多くて。あれが嫌でね。中世ヨーロッパに忠実に再現しなくてもいいじゃない。
「異世界シャワー論争」なんていうのもあったわね。異世界で娼婦がシャワーを浴びに行くシーンに対して「蛇口やボイラーは異世界には無いだろう」って噛み付いた作家さんがいてね。
私は呆れたわね、異世界でもシャワーは可能と考えるわ。温泉地ならお湯は解決するし、水道は古代ローマ時代にあったから原始的な作りでも止水栓は作れたと思うし、いざとなったら精霊や奴隷に何でも任せればいいから矛盾しないと思うのよね。
あらやだ、いけない。また逸れちゃった。ごめんなさいね、自分でもおばちゃん化が進んでると思ってはいるのだけど。そうそう、コンテストの結果だったわね。
結論から言うと全部ダメだったわ。さっきの人たちがあっという間に上位を駆け上って、予選通過からの受賞、私は落選続き。私もいい線行ってた時もあったけど、後から来た彼らにあっという間に差をつけられてね。
彼らと何が違うのかしらと本当に落ち込んだわ。コンテストではなくても上位のランキング作品をいくつか見ると「え? こんなに内容薄くてもいいの?」やら「もっと掘り下げたら話に厚みが加わるのに」なんて、まあ、ざっくばらんに言えば「これなら私にも書けるわ」ってレベルばかりに感じて書こうという気持ちになったの。それも怖いもの知らずというか世間知らずというか。
それに、さっき話したグループでも鴇田さんは年が近いとわかって、TwitterのDMでやり取りしていたら職業も似ていてね。例えるなら、看護師と薬剤師や、コンビニの店員とドラッグストアの店員みたいな大きな枠でくくると同じような業界だったの。すごく親近感持ったし、彼女のような見事な小説を書きたいと憧れていたわ。
そのためにいろいろともがいたわねえ、小説講座を受けたり、小説の書き方のハウツー本を買ったり。片っ端からコンテストに応募したり。
結果? 小説講座はすぐに辞めちゃった。その先生はWeb小説作家をゲストに呼ぶ癖に、執筆歴はWeb小説のみと申告したら「経験無しとして指導します」ですって。Web小説は他人からの反応があるから、孤独が必ず付いて回る小説家業に向かないから経験にはならないって。
Web小説だって大抵は会社や学校に内緒にしているから充分孤独だと思うのだけどね。言ってることとやってる事が矛盾しているからダメだわって。ハウツー本も書き方なんて頭に入らなくてすぐに資源ごみになったわ。
他の投稿サイト? 私ね、不器用だから並行することが苦手なの。だからWriteReadのみ。
しかも一般的な小説とWeb小説の区別もついてなかったから、分けると余計にややこしくなるから公募にも出さなかったわ。
でも、非公式だけど一度だけ興味を持ったコンテストはあったわね。有志の書籍化作家が審査員を務める「未来の作家コンテスト」。さっきも言ったけど、非公式なものだったから賞金も無し、出版も無し、大賞にはイメージイラスト書いてくれるだけ。だから大したメリットはないけど、書籍化作家さん、つまりプロに選ばれたらある程度実力が認められるようなものじゃない。審査員の中にさっき話した藤井さんもいたし。性格云々はともかく実力はあるのだから見てもらえるなんてチャンスかなと。
でも、長編だから書けるかしら、どうしようかなと悩んでいたらね、ある事件が起きたの。
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