第17話 小動物系女子大生は触れ合いたい

 兄とやり取りを続けること三日。

 デート当日を迎えた。

 多少空に雲がかかっているものの、空気がカラッとしている秋日和。

 動物園の入場口前の近くで、私と恭太郎さんは兄たちを待っていた。

 人混みの中から、こちらに向かって手を振る兄の姿が見えた。

「冴姫~! 恭太郎く~ん! お待たせ!」

 兄と、その隣にいる小柄な女性がこちらへ駆け寄って来る。

 彼女が兄の恋人、鯉川舞衣さんだ。

 ふわふわとした栗色の髪と、くりっとした愛らしいリスみたいな目が印象的な女性だ。

 私よりも小柄で華奢なので、いつも兄が「痩せすぎで心配だよ~」と惚気てくるのだ。

恭太郎さんと見比べてしまうと、まさに親指姫とゴリラだった。

「恭太郎くんだよねぇ? 初めましてぇ、慧くんの彼女の鯉川舞衣ですぅ」

「……武蔵恭太郎です。今日はよろしくお願いします」

「まぁまぁ、そんなに硬くならないでよぉ! 今日は思いっきり楽しもう、ねっ?」

「…………」

 底抜けに明るくて人懐っこい舞衣さんのテンションに不慣れなのだろう。

 恭太郎さんは戸惑ったように沈黙してしまった。

 今日は一日中一緒にいるのに、こんなことで大丈夫なのだろうか。

 そんな心配をしつつ、私たちは受付でチケットを買い、開園と同時に入園した。

 動物園内の地図を見ていると、兄が私たちに聞いてきた。

「皆は何か見たいものとかあるか~?」

 兄の言葉に私たちは地図を眺めると、私と恭太郎さんは淡白に答えた。

「自分は特にありませんね」

「私も」

 今日は修治郎さんへ送る写真を撮る為に来たのだ。

 目的が達成出来ればいい。動物が嫌いというわけではないが、特別好きでもなかった。

すると私の言葉に舞衣さんが挙手してきた。

「はぁーい! うち、レッサーパンダ見たいなぁ」

 舞衣さんの一言で、この動物園でも人気者のレッサーパンダを見に行くことになった。

 さっそくレッサーパンダがいるエリアへ歩き出すと、舞衣さんが兄に甘えてきた。

「慧くん、手ぇつなご?」

「はいは~い。どうぞ~」

 てっきり照れると思った。

 だが兄はむしろ爽やかな笑みで手を出す。

 舞衣さんはにっこり微笑んで手を掴む。

 しかも兄の腕に抱き着いてきた!

 嘘でしょ……? 人前で手を繋ぐなんて……!

 目を疑うような光景に私と恭太郎さんは完全に言葉を失った。

 すると舞衣さんは首を傾げつつ聞いてきた。

「どうしたの、二人ともぉ?」

 まさかこの人、自覚がないの……?

 激しく動揺してしまったが、私はどうにか言葉を組み立てた。

「ま、舞衣さん……何をしているんですか……?」

「何って……スキンシップかなぁ」

 何に驚いているのか分からない。

 不思議そうに舞衣さんは言ってきた。

 返す言葉が見つからない……。

 思わず茫然としてしまった。

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