第78話 番外 葛様に学ぶ政治経済・選挙編

 開いている時間、自室でポストに入って居る郵便物の確認をする、この住居では基本的に9割が一緒に住んでいる葛様宛で、企業からの株主通信的なDMが山ほど届くのだが、珍しく自分と葛様宛に揃いのはがきだった、そもそも自分宛の郵便物が珍しい。

 一枚手に取って裏を見る。

 選挙の案内?

「どうした?」

 横にいた葛様が聞いてくる。

「いや、コレです」

 葛様宛ての分を渡す。

「ああ、選挙か、そういや、おぬしもそんな歳じゃったな?」

 余り興味もなさそうにハガキの裏表を確認する。

「初めて来ました」

 正直何をするのかすら分からない。

「まあ、一種の成人の義務じゃな?」

 葛様が少し感慨深げに呟いた。

「何を如何するんです?」

 正直何を如何するのか分からない。

「このハガキと身分証明書持って、このハガキに書いてある場所に行くだけじゃ、難しいことも何にもありゃせんわい」

 葛様が少しあきれ気味に答えてくれる。

「そんなもんですか」

「正直、コレの日に行くのは面倒じゃから、期日前の方が楽じゃがな?」

「期日前?」

「当日仕事だのなんだので行けない社会人は結構多いから、先に入れておく制度じゃ、そもそも半月後の予定を丁寧に開けとくのは結構な手間じゃし。まあ、近くを通ったらついでで入れておけば良い」

 色々ルールがあるらしい。

「届いた時点で投票所自体は開いておるからな、学校帰りでも仕事帰りにでも寄るるとしよう」

「そもそも、おぬしは何処に入れるかきめとるか?」

「今一分かりません」

 正直に答える。政党も政権もマニフェストもよく分からない。

「勉強不足じゃな?」

 葛様が呆れ気味にジト目を向けてくる。

「おっしゃる通りです・・・・・・」

 内心で平べったく成る。

「不勉強な私に、何か選ぶ基準、知識を授けていただけませんでしょうか?」

「今夜のおつまみに一品追加じゃな?」

「はい、喜んで」

 割と安かった。


『増税によりプライマリーバランスを整えて財政健全化を・・・・・・』

 TVで選挙演説が流れてくる。

「基本的に、増税唱えてる時点で全部問題外じゃな?」

 割と雑なバッサリだ。

「国債返さないといけないんじゃ?」

 ニュースやワイドショーで国民の借金がどうのと言っているのは知っている。

「アレは日ノ銀が国債を8割保有してる次点で、自分で金を刷るだけで終わりじゃ、更にその金利は、ほぼ税金として国が回収していくから、国内で金が増えるだけで、返す必要すら無い、外国が保有してる場合は多少面倒じゃが、次の国債刷って前のを返すだけで終わりじゃ、税金集めて国債返済した場合は、国内の金を減らすだけじゃからソレこそ意味が無いぞ?」

「無意味なんですね?」

「金を集めて燃やしてるのと変わらん」

 小さく呟いて続ける、段々と難しくなってきた。

「平たく言うと?」

「基本的に減税路線の政治家にしておけ」

「成るほど?」

 大分平たくなった。

「それと、政府支出をカットしてスマート化して財政健全化とか言うのも全部落とせ」

「ワイドショーとは逆ですね?」

「そもそも、ワシら、おぬしも含めて準公務員というか、役所の委託業務じゃからな、大本の金の流れを絞められると、おぬしの給料も下がる」

「ソレは怖いですね・・・・・・」

 いきなり具体的に直撃しそうなネタが飛んできた。

「風が吹くと桶屋が儲かる式に、政府が節約とか言い出すと末端で金が回らなくなり、壊死するように人が死に、呪詛をまき散らしてワシらの仕事が増える割に、稼ぎが減る、国が節約するのが美徳と考える時点でまちがっとる」

「前提から大分凄いですね」

「『武家諸法度(ぶけしょはっと)』やら、『武士の家計簿』の節約では個人の家計簿なら兎も角、国の景気は上がらん、歴史に学べ」

「確かに江戸時代は最後のほうで、経済やら何やら尻つぼみになってるんでしたっけ?」

「江戸城の再建も出来なかったからのう、あの時期は金本位制じゃから、鉱山を掘り尽くした時点で、新しく金(カネ)を準備することも出来ん、集めて鋳つぶす改鋳も手間じゃから、あの頃はどうしようも成らんわな?」

「成るほど・・・・・・?」

 色々歴史で分かるモノらしい。

 納得しかけて、ふと戸惑う。

「昔は?」

「現在は紙幣、信用創造の状態じゃ、何も担保になってるわけでも無い、供給量が極端に大きく成らん限りは刷り放題じゃ」

「極端に?」

「具体的には、先ずはインフレ目標が1%じゃから、国全体で流通しておる通過の1%ずつ刷れば良いだけじゃ、この国は1千兆が発行済み通貨じゃから、年間10兆は黙って増やして問題ない、国債刷って現金化して、其れを国家予算にすれば良いだけじゃ」

「大分大きいですね?」

『インボイスを整備して税収を増やして・・・・・・』

 TVが別の話題に移る。

「基本コレも全部潰しとけ」

「そもそも何ですコレ?」

「年商一千万以下、年間利益300万以下の今まで免税されていた個人事業主にも課税するシステムじゃ、極論、売り上げ300万で仕入れと諸経費が290万の所に、30万の税金を取るシステムじゃな?」

「そもそも数字が合わないんじゃ?」

「だからそう言った個人事業主は破産してそのまま死ねといった所じゃろう?」

「身も蓋もないんですが・・・・・・」

 剰りにも平べったすぎてげんなりする。

「先に言った通り、税収は財源としては言うほど重要では無い、前提が可笑しいんじゃ」

「それじゃあ、何のための税金?」

「極論、財務省と税務署が威張るための税金じゃな?」

「極端すぎません?」

「納得行かんかったら、自分で調べ直して見ろ、もっと納得行かんように成るから・・・・・・」

 葛様もげんなりしていた。

「納得行かないんですね?」

『防衛費を減らして他の財源に・・・・・・』

 TVが又別の話題に移る。

「防衛費は増額で見てるところを選べ、隣国は粗方敵国じゃからな、そもそも自衛隊の連中にはワシらも其れなりに連携しとるから、ワシらだけ儲かってるなんてことを言われても困る、そもそも、減らしても別の枠に流されるか怪しいから、減らす前提の時点で対象外じゃ」

 嫉妬関係で呪詛も貯まるしと小さく呟いている。

「後は、どの辺を?」

「ワシとしては、表現の自由を推してる所を推したいが、コレは政党じゃ無く個人枠じゃ、何処ぞの漫画家でも入れとけ」

 同級生の面々も一緒に怪しい薄い本を買いあさっているので、その辺なのだろう。



「丁度良いから入れておくか」

 呪詛祓いの仕事帰りに葛様が提案してくる。結構夜も遅いのに、役所が開いていた。

「あれ? ハガキ?」

 例の案内のハガキを持ってきていない。

「身分証だけで構わん、名前書く紙が一枚増えるだけじゃ」


 投票は思ったより簡単に終わってしまった。



「でも、以外とこう言うのにも参加するんですね?」

 一連の流れで、意外と饒舌に返してくれる葛様に感心する。

「税率で稼ぎと出費に直接影響するし。最悪、ワシらの生存権やら存在権的なのにも影響するからな? 他人事(ひとごと)には成らん」

「そんなもんですか」

 妖怪やら神霊に関する公約なんて見たことも無いが。

「そもそも、人間の方が影響受けるんじゃから、オヌシらは投票に行かない時点でただの阿呆以下じゃぞ?」

「投票率?」

 全人口の半分ぐらいだった気がする。その言い分では全人口の半分が阿呆に成ってしまう。

「阿呆が多い事をしみじみ実感するだけの数字じゃぞ?」

 身も蓋もなかった。


 追伸

 選挙時の窓口に例の歴女がいたりしましたが、本編に影響ないのでカット。

 そんな訳で、恒例の選挙の時期です、投票には行きましょう。

 何処に入れろとは言いませんが、作者側としては表現の自由と、減税、インボイス反対、防衛予算増額で選びたいところですが、色々見ても良い感じの政党というのは少ないモノです。少なすぎて、消去法で作者がどれに入れるかバレます。

 頑張ってマシな政党を選びましょう。

 最悪投票行くだけでも構いません、白紙でもかまわんのです、行かないよりはマシ、選挙に行ったという事実が大事です。

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