第49話 番外 飲ませ過ぎの夜
「其れは何回飲むんですか?」
「一杯毎に交代で、三杯飲んだら次の盃で、全部で九杯じゃな?」
盃を構えた陽希が一瞬遠い目をした。
「まあ、神事じゃし、縁起物じゃから頑張れ」
無責任に煽る。
「因みに、盃は現在過去未来を表して、未来永劫一緒に居る事を誓うと言う意味じゃな?」
解説すると、一気に真面目な顔に成って、クイッと盃を空にした。
「じゃあ、こっちの番じゃな?」
空の盃を受け取り、注ぐための瓢箪と交換する。
「遠慮せずに注げ、儂が潰れたら何しても良いぞ?」
恐る恐ると言った調子でちょろちょろ注いでいくのを、諸々気にするなと窘めつつ、やる気を煽り。盃一杯に成った酒をくいっと飲み干す。
何時も手酌で飲んでいるが、一緒に飲む相手が居るのは良い物だ。
因みに、本家に行けば奉納やら献上やらで宴会的な事にもなるが、アレは良くない、堅苦しいし、水面下の勢力争いが見えて安心して飲めない、遠縁の子孫とは言え、身内の勢力争いは酒の肴には美味しくない。
そんな感じで差しつ差されつ、交互に盃を空にしていく。
そして、無事に最後の一杯を飲み干した。
「あや、飲ませ過ぎたか?」
座ったままの陽希が全身をふらふらと揺らしている。
「生きとるか?」
「酔ってます?」
変な答えが帰ってきた。
若いのに酒を飲ませるのがついつい楽しくなってしまい、はしゃいで三三九度(さんざんくど)までやらかしてしまった。流石に飲ませ過ぎたかとちょっと反省する。
「ほれ、今度は水じゃ、少し薄めとけ」
コップに水を汲んで陽希の口の中に流し込む。
指示に従って飲んでくれるので、まだギリギリセーフといった所かのう?
まあ、酔い潰れて二日酔いでケロケロするのも大事な人生経験かのう?
酷い悪酔いをする様な酒では無いので、安心では有るのだが。
「葛様……」
「ん?何じゃ?」
呼ばれて思わず近くに寄る。
不意に抱き締められた。
「おや、やっとその気か?」
慌てずに身を委ねて、抱き締められながら揶揄う。
「好きです」
不意打ちに囁かれ、ボッと顔が熱くなる。
「何じゃ、今更か?」
思わずニヤニヤとした笑みが浮かんだ。
だが、続きが来るのかと身構えて様子を見るが、躊躇する様子で目線があっちこっちに揺れていたので、ここぞとばかりに煽ることにした。
「何もせんのか?」
ニヤニヤと笑みを浮かべて腕の中でもぞもぞと動き姿勢を正し、至近距離で顔を覗き込む。
陽希の目線の先を確認する、此方の目と唇、胸元辺りに揺れている、何時もはこっちに気付かれない様にと、ちらちら見る程度なのだが、酔った影響か、何時もより視線に遠慮が無い。
因みに、胸元は微妙にブラが浮いて居た、成程、性欲が無い訳では無いな?
ニヤリとした笑みを深くする。
気付かれたのを自覚したのか、一気に陽希の顔が赤くなる。
「三三九度の盃何じゃから実質結婚式じゃろ?」
「結婚式・・・・」
おうむ返しに陽希が返して来る。
「其れを終えたんじゃから、今は初夜じゃぞ?」
「初夜・・・・・」
手を出して良いのだろうかと言った様子の迷いが欲望に傾いて行く。
「手を出さない方が失礼じゃぞ?」
不意打ちに殴られたような衝撃を受けた顔で、此方の顔を見て来る。
一瞬、死を覚悟する様な何とも言えない表情を浮かべた後で、抱き締める力を一層強くする。
陽希の心臓の音がバクバクと音を立てているのが良く聞こえた。
「ほら、先ずは口からお迎えせんか?」
意味が分かったのか、唇が近づいて来た。
唇が重なる、最初は遠慮がちに、本当に触れて良いのか確認するように一瞬だけ軽く触れて、直ぐに離れた。
良かったのかと言う様な此方の指示を仰ぐような視線、其の何とも言えない表情にクスリと笑って答える。
もう一度唇が触れる、先程よりは接触時間が長い、怒られないのをやっと確信したのか、段々と接触面が広がり、時間が長くなり、唇が開き、舌が侵入してくる。
予定調和と慌てず、此方も舌を絡ませる。
暫く口の中を蹂躙した後に呼吸が苦しくなったのか、抱き締める腕が緩み、唇が離れた。
涎の橋がかかり、ぷつりと切れる。
陽希がゼイゼイと呼吸を整えている。
この期に及んでやってしまったと遠慮する様な視線を感じる、未だ行けるぞと笑みを浮かべて返してやると、改めて大事そうに抱え込まれ、押し倒された。
追伸
お酒は二十歳になってから。
飲み過ぎ、飲ませ過ぎには注意しましょう。
用法用量、ペースを守って楽しい飲酒ライフを送りましょう。
ところで、旅行なんかだと、行く先の国の法律が着用されます。
つまりドイツだと16からビールが飲めて、蒸留酒は18から飲めます、合法です。
まあ、悪用すると葉っぱが合法に成りますが、抜けて無いと帰国の際に税関で御用ですのでご注意を。
つまり、異世界モノで酒飲んでも合法何だけど、なろうなんかだと警告&削除が来ます。世知辛い。
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