第23話 訳知り顔の二人

 陽希の背中を見送り、少し間を置いた所で。シュタッと屋上の一段高く成って居る部分から飛び降りて着地する小さめの人影が有った。

「これで良いですか?」

 目線を送り、降りて来た主を確認して呟く。

「まあ、お主から出せる情報は其れ位じゃな、十分じゃろう」

 何とも言えない表情を浮かべて居る葛様が居た。相変わらず見た目は小さく可愛らしい存在なのだが、下手に触ると酷い目に会う。

「全く、好きだと言うならしっかり儂の目の前で言えば良い物を・・・」

 ぼそりと呟いていた。

 因みに、葛様とは実家に居る居候との同族と言う事と、見鬼と言うレアスキルの関係で退魔の仕事を時々受ける関係上、陽希抜きでも前々からの知り合いであるので、先程の推理話は相手を納得させる為の後付けである。

「しかし、良いんですかあんなヘタレで?」

 思わず呟く。

「あ奴、結局微妙に男扱いされない物だから、男としての自信が足り無くていじけておるだけじゃし、儂と釣り合うような完成品を探しても先ず居らんからな、育てるのも楽しいもんじゃぞ」

 ニヤリと笑みを浮かべる、長命なだけ有ってスパンが長そうである。

「可愛い格好させてるせいも在りそうですが?」

 其処はツッコミを入れて置く。

「しょうがないじゃろう、あ奴は幼少期に念入りに憑かれて魂の器にも罅が入っておる関係上、普通の恰好じゃと丸っきり餌扱いじゃからな、儂が付きっきりする訳にも行かんし」

「双性の魔除けですか、彼奴も良い歳なんだからそろそろ効果が無くなるんじゃ?」

「可愛く、似合って居る限りは有効じゃ、あ奴は喉仏も出て来んし、それに・・・」

「それに?」

「可愛い方が儂も楽しい」

 一番良い笑顔を浮かべている、趣味も大分入って居るらしい。

「其れは何よりです」

 ある意味、誰でも良いと言う訳では無さそうだと納得した。


「所で、あ奴に化粧させてみたんじゃが、どうじゃ?」

「カラーリップですか? それぐらいじゃあんまり変わらないと思いますよ?」

「何じゃつまらん、もうちょっと色っぽい対応をだな・・・・」

「幾ら可愛くても男に欲情する趣味は無いですから」

 男に色っぽさを要求するのは如何なのだろう?

「修道はたしなみじゃと言うのに・・・」

「人をホモにするのは止めてください・・・・」

 流石にぐったりと否定する。

 この国には何故か、尻の穴が小さいという謎の罵倒、つまり尻の穴がガバガバであるべきと言う意味の慣用句が有るが、其処まで一般的に成られても困る。

「と言うか、男らしくさせたいにしても、あいつ明らかに掘られる側じゃ無いですか、メス堕ちさせて如何するんですか・・・・」

「儂的にはリバOKじゃぞ?」

「生えるんですか?」

 いや、この人だとやりかねない・・・

「何とでもなるわい」

 クククと笑みを浮かべて居る。対象がこっちじゃ無くて良かった。

「さいですか・・・・」

 友人的な物の一人として、あいつが男として繋がれる事を祈るべきだろうか?

「所で、男らしくってアレですよね? 一連の行動に雄らしさが足り無いって言う意味ですよね?」

「そうじゃな、此処に聞きに来る時点で既に違うな」

 葛様が苦笑を浮かべる。どうやら答えとしては自分の考えで正解の様だが、答えを教えられないのがもどかしい。

「アレの指切りで絡んだ縁、呪いの一歩手前みたいに成ってますけど・・・・」

 おや、見えたのか? と言う感じに葛様がキョトンと此方を見る。

「おお、良く見えたのう、神霊相手にした指切りの約束を反故にしようとすればああ成るわい、死なない様に気を使った結果としてアレで済んどるだけじゃな」

 今度は苦虫でも噛んだような何とも言えない表情をしている。

「死にます?」

「儂が付いてる限りは死なせはせんが、あいつ次第じゃな?」

「無事に済むことを祈ってますよ」

 身近な隣人に死なれると後味が悪い。

「まあ、あの程度、約束の分ならあ奴の一言と一晩も有れば解呪できるんじゃがな?」

「その条件があの謎かけと?」

「そうじゃ、お主の考えた答えで正解じゃ、言うほど難しくはないじゃろう?」

「確かに難しくは無いですけどね・・・」

 慣れていないとこの類の謎かけは結構手間取る。

「あ奴が自力で其れに辿り着ければ問題無いんじゃがな」

 具体的な希望としてはゲイナー的なのだろうか?それともドモン?シロー?

「その中ではシローが良いが、浜ちゃん程度で構わんぞ?」

 大分ハードルが低くなった。だが言葉にする前に読むのは止めて欲しい。

「制限時間は?」

「双性の魔除けが効かなく成った頃か、儂の愛想が尽きた時じゃ、具体的には知らん」

 其処まで聞くな阿呆と言った様子で話題を打ち切られる。

 しかし、一言なのは解ったが、一晩とは?

「一発やる分じゃ。房中術の一種に成るが、儂とあ奴の気を混ぜて陰陽的に循環させる分じゃな」

「さいですか・・・」

 口に出す前にどストレートにSEXだと言いきられた、人のSEX事情は其処まで知らなくて良いと思う。

「もう好きなだけいちゃついててください・・・」

 流石にぐったりと呟いた、人を巻き込まないで欲しい。



 追加

「ショタ的には今が一番美味しいのでは?」

 逆方向から援護射撃して見る。

「・・・あ奴が早目に正解する事を祈ろう」

 一瞬揺れたらしい。

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