色
母は霊感が強いというか、ちょっと電波な所があって、たまに妙なことを言い出すことがありました。
こないだね、夜にうつらうつらしながらテレビ観てたら、天井近くに何かが動いて、目で追おうとしたらその白い何かがビュンッて動いて、明美の部屋の方に消えたのよね。明美が怖がるかと思うから、明美には言わないで欲しいんだけど。
こんな具合です。
明美は妹で、年頃になった彼女は兄弟で唯一自分の部屋を持っていました。
ヒロマル、この前白いものが飛んでった話したでしょ? 翌朝明美が、「ゆうべ勉強してたら、何か白いものが視界の端を横切った気がして、思わず振り返った」とか言うのよ。同じものを見たなー、と思ったけど、明美が怖がるから「ふーん、気のせいじゃない?」って知らん顔したの。明美には黙っといてね。
そして数日。
ヒロマル。ゆうべはね、今度はドッジボールくらいの黒いものがひゅっ、てテーブルの下に入るのが見えたのよ。でも明美が怖がるから明美には黙っといてね。
もう。今住んでる家の怖い話やめてや。僕だって怖いわ。
そしてその翌日。
ヒロマル、明美がね、「お母さん、この前、勉強してて白いものが通り過ぎた話したでしょ? 昨日は寝てたら顔の前を黒いものが横切って行ってめっちゃビックリした」とか言うのよ。明美とお母さん、やっぱり同じものが見えてるみたい。今度もまた「ふーん、気のせいじゃない?」って知らん顔しといた。明美には黙っといてね。怖がるから。
いや、僕にも黙っといてや何それメッチャ怖いやん。
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