第20話 本業のてこ入れ③
「ポトスのギルドから面会です」
「入れ」
ディラックが扉を開けると1人の男がいた。日に焼けた肌をした背の高い長髪で、白金の鎧を着て鋭い目でこちらを見ている。
「デュラン団長、ギルド長のジェマとうちから出向してるアルテミスです」
ジェマとアルテミスは頭を下げる。デュランはこちらを見ながら尋ねた。
「何の用だ? 冒険者では手に終えない化け物でも出て応援を頼みにきたのか?」
「仕事をもらいにきた。しかし、フォルセナの騎士団の団長にしちゃあ、随分若いな」
デュランはふふっと笑った。
「なったばかりだね。うちは実力主義だから年齢は気にしない。まぁ、人手がいないからというやつもいるがね」
「鍛えられた身体をしてるのが分かる。少しは強いんだろう」
「フォルセナを敵に回すか? しかし、ジェマが直々に来るとは思わなかったな」
「お知り合いなんですか?」
「直接合うのは今日が初めてだが、冒険者のジェマは戦闘に長けていたことで有名だ。ギルド長なんかで油を売っているのが不思議だ」
「良いギルドだからな。ところで団長殿、うちに仕事を依頼しないか? 地元の魔物退治ばかりでは広がりがなくてな」
「……考えておこう」
「あと、『星屑のオーブ』を知らないか?」
「知らないな」
「アルテナのアンジェラ王女からの依頼なんだが」
「アンジェラか」
デュランは遠くを見るような目をした。
「訂正しよう、どこにあるかを知っている。東に月の国があるが、そこの神殿の奥にある。ただ、魔物がそのオーブを守っていて容易に近づけない」
「団長殿でも倒せなかったのか?」
「戦える陣容で無かったから引き返した。戦ってすらいないが、弱くない」
「なるほど」
有益な情報だ。うちのギルドで対処できるような冒険者はいるのか? 誰かスカウトしないといけないレベルだと思う。
「倒せそうな人は知らないか? 団長殿は多忙で難しそうだ」
「何人かめぼしいやつはいる。それも考えておこう」
「よろしくお願いします」
こうして騎士団団長との初顔合わせは終わった。帰路は相変わらずジェマが五月蝿くて閉口した。強くて有名なのは知らなかったが、こうしてみるとただのオッサンにしか見えない。世の中見た目では分からないものだ。
「それにしても、なんで『星屑のオーブ』は知らないなんて嘘をついたんでしょう? アンジェラ王女の名前を出したら急に変わりましたし……。知り合いなんでしょうか?」
「あの団長殿は武者修行で各地をてんてんとしたはずだ。そのころ知り合ったのかもな。嘘をついたのも何か大事なものなのかもしれん。どうでもいいがな」
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