第19話 本業のてこ入れ②

「そうねぇ……」


 アンジェラ王女は腕組みをして考え込んでいる。無いと即答されると思っていたので、意外な反応だ。実現可能な依頼だといいのだが。アルテナの王女から依頼があって完了した実績があれば、次に繋がりやすいが果たして何と言うか、王女の言葉を待った。


「もし『星屑のオーブ』をとってきてくれたら、金貨50枚あげるわ。どこにあるかは知らないけど」

「分かりました。特徴はありますか?」

「魔法をかけると金色に光る、手のひらぐらいの球体の宝石よ。エネルギー源になるらしいの。本で読んだだけだから実在するかもわからない。でも、これからの開発にきっと役立つわ」


 思わぬ依頼を受けたな。完遂するのが難しそうだ。本当に欲しいものなのは間違いなさそうだが……。


「ま、できなくても構わないわ。色んな意味で期待していないし。持ってきてくれたらテストして、期待通りのものなら、きちんとお金は払うわよ」

「わかりました、受付ます」


 新たな依頼を受けて、ギルドに戻るとすぐに掲示された。報酬の高さから話題を集めたが、どこにあるか分からないことがネックになり、引き受けるものはすぐに現れなかった。情報収集できる冒険者ばかりじゃないから仕方ない。気を取り直して、今度はフォルセナの中央に情報収集に行くことにした。


「それでは、中央に行ってみましょう」

「気が進まないが、まぁ行ってみよう。男2人旅っつーのも味気ない」

「そこは諦めてください」


 なんやかんやで中央に着く。道中のジェマの愚痴に意外と疲弊した。女がいないなんて……と五月蝿かった。普段どうしてるんだ?


「とりあえず、ディラックに会いましょう」

「誰でもいいから早く終わらせるぞ」

「何か投げやりじゃないです?」


 何か投げやりなジェマを引きずるようにして、ディラックに会いにいった。


「久しぶりだな。財務諸表はよかったぞ。まだ潰れなさそうだな。手紙は書いたが、今日はどうした?」

「本業の依頼の数を増やしたいんだが、何か良い知恵はないか? アルテナのアンジェラ王女は『星屑のオーブ』が欲しいと金貨50枚の依頼をくれたが、お前たちからは何もないのか?」

「脅しにきたのか」


 ディラックは呆れた顔で答えた。


「王女のいう、何とかのオーブなんて聞いたこともないぞ」

「知ってそうなやつはいないか?」

「財務部にはなぁ。騎士団ならどうか……そちらの方は?」

「ギルド長のジェマさんだ」

「ジェマ、こちらは財務部のディラックです」


 ジェマとディラックはお辞儀をして言葉を交わす。


「おたくさんから随分金を借りたが、もう大丈夫そうだ」

「良かったです。軌道に乗ることをみんな期待しています」

「うちも大きくしたから情報収集できたんだが、何か良い情報はないか?」

「私にはありませんが、騎士団なら何か情報をくれるかもしれません。団長に案内します」


 そういって2人を案内しはじめた。

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