第17話 人員増
そんな現場回りをしていると、ディラックから手紙の返事がきた。
「どれどれ」
アルテミス殿。報告書、拝見いたしました。財務諸表を見るに、建設仮勘定が非常に重たいのですが、大丈夫でしょうか。また、どんな投資か知りたいです。追加の借入は運転資金なら上申を受付ますが、基本は自前で賄う方向でお願いします。損益は想定以上によく信じがたい見方もありますが、投資が重たすぎて運転資金を圧迫したという貴殿の見方にひとまず乗ろうという認識です。また、定期的に報告ください……。
なんか怪しいけど現場がそういうからまぁいいよ、みたいな内容だった。運転資金と言ってしまえば借入がわりと自由にできることになった。投資の内容は次回回答するとしても、あとどれくらいの資金があればマシンゴーレムが完成するのかは確認したいところだ。ワッツのところがうまくいったので浮いた資金で食堂もうまく回したい。ポーション職人が雇えれば道具屋も劇的に良くなる。そうしたら、依頼を増やして本業も増やせる体制が整うな。……でも、ちょっと都合よく考えすぎかな。
そんな妄想をしていたら、興奮した様子のジェマに出くわした。何かあったのだろうか。
「おい、ポーション職人が見つかったぞ!」
「え、本当ですか!」
「それに、料理人と給仕と鍛冶もだ」
「そんなに急にばたばた決まるなんて……流れみたいなものがあるんですね」
「あぁ、拡大の流れが来ているかもしれない。うまく乗りこなすぞ」
「モティ、ワッツ、ニキータを呼んできます」
駆け足で3人のところに向かい、ジェマの部屋まで集め、パメラにも一緒に話を聞いてもらうことにした。
「大事な話がある。人を新たに雇うことにした。まず、モティ。ポーション職人を見つけた。ポーションを内製して仕入れを減らせ。在庫をコントロールしろ」
「次にワッツ。鍛冶職人を1人入れる。武器防具を増産して、売れ」
「最後にニキータ。料理人1人と給仕2人だ。人気メニューを開発して繁盛させろ」
モティが口を開いた。
「ポーション職人はどこまで作れるんですか?」
「低級、中級、上級、全て作れるといっていた。材料は仕入れるか買取対象に加えよう」
「逸材ですね、何でこんなところにいるんでしょう」
「意外だよ、本当に。無理だと思っていたからな。うまくマネジメントしてくれ。これはワッツもニキータも同じだ。お前らはプレイヤーでいるだけでは許されなくなった。人を使って成果を出すマネージャーになったからな」
思わぬ重責に身の引き締まる思いの3人。アルテミスも、自分の進言で人を雇いいれて拡大を図っていることに責任を感じた。失敗したら利益を圧迫するだけになる。しかし、それは意思決定をしたジェマも同じだろう。しかし、重責を人に悟らせないジェマの凄さを新たに学んだアルテミスだった。
「以上だ。アルテミスだけ残れ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます