第16話 夜の部と求人

 アルテミスは考えていた。食堂をどう運営していったらいいか。隙間時間があるとはいえ、1人であれだけの仕事をこなすのは大変だ。けれども、単純に営業時間を減らすと売上は減ってしまう。


「利益構成を変えるしかない」


 酒の利益率が一番良い。だから、夜の営業時間を伸ばすのが一番良い。ただし、ニキータは在庫処分を気にしていた。在庫をとるか利益をとるかは難しい問題だ。


「利益をとった上で、人気メニューを開発して売れ残り在庫を減らす方針にしよう」


 食堂の核であるメニューが弱いと睨んだ。余りがでないようにやりくりをしているだけで、うまい料理を出すことがおろそかになっているようにみえる。だから、利益拡大を口実に料理開発に力をいれてもらう。ニキータを説得だ。


「……というわけで、朝昼をやめて夜を伸ばしたらどうだろう」

「売れ残りはどうするにゃ? 捨てるのもったいないにゃ」

「売れ残らないメニューを開発してほしいんだ」

「ご無体なこというにゃ……」

「最初は売れ残りは仕方ないから捨ててくれ。何が売れ残ったかを考えてほしいんだ。廃棄は目をつぶるから利益を追ってほしいんだ」


 うーん、と腕組みをして考えるニキータ。


「朝昼のお前たちの食事はどうするにゃ」

「考えてなかった、誰か雇うしかないね」

「にゃんだってー!」

「雇っても夜の部で利益が出てれば大丈夫」

「朝昼やめるんじゃにゃいのか!」

「いや、無理だわ。ごめん。でもニキータの負担は減らしたい」

「分かったにゃ。代わりが見つかったらやってみようにゃ」


 方針とは違う結果になってしまったが、相手があることだから仕方ない。ジェマにまた求人のお願いだ。


「また求人をお願いします」

「今度はなんだ?」

「料理人と給仕です」

「なんでだ?」

「ニキータは夜専門にして営業時間を伸ばします。朝昼を任せられる人が欲しいです」

「夜の給仕もほしいな。3人募集しよう。儲かるあてはあるのか?」

「酒です。人気メニューも開発してもらいます」

「酒か。分かった。やってみよう。ところで、ワッツの方はどうなった? 確認しろ」

「はい、分かりました」


 ワッツがやり方を変えて1ヶ月になろうとしている。何らかの結果が出ているはずだ。見に行って数字も確認しよう。


 数字はすごいことになっていた。修理の件数は右肩下がりになっていた。無償支給は右肩上がり。在庫が少しはけている。良い循環が回ってきた証拠だ。買取の出金が減って武器防具の入金が増えている。ワッツにも聞いてみた。


「順調そうだね」

「ようやくオラの作った武器防具が世に認められてきた感があるだ。修理も減ったし、作る数も多いだ。最近は買取してないだ。まぁ、珍しいものが少ないってのもあるだが」

「数字でも確認できたよ」

「お願いがあるだ。鍛冶のできるやつ、1人雇ってほしいだ。回らないだ」

「分かった、ジェマに頼んでくる」


 ジェマのところに行ってまた戻る格好だが、人を雇う攻めができてきた。良いサイクルが少しずつ回り始めた証拠だった。

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