第15話 食堂に潜入

「というわけで今日は食堂で働きます!」

「頑張ってくれにゃ。料理以外をお願いするにゃ」


 朝5時。早い。


「といっても、作るのはスープとサラダぐらいにゃ。パンは町のパン屋さんから届けてもらっているから、やってもらうことはないにゃ」

「米と魚が出てきたことがあったけど?」

「前の日の夜に余ったやつにゃ。朝食べにくるやつはここで働いてるやつと少しの冒険者ぐらいだから十分足りるにゃ」


 喋りながらもきっちり手は動かすニキータ。スープが沸騰し始める。


「スープも余りもので夜にあらかた作ってあるにゃ。寝かせた方が味も染み込むにゃ。朝は熱々にして味を整えるだけにゃ。パンもきたし、おしまいにゃ。あとはお客がくるまで待つだけにゃ」

「手際が良いね」

「工夫してるからにゃ」


 開店してから何人か客がきて、注文をとる、オーダーを伝える、皿を運ぶ、精算する、皿を片付ける、テーブルを拭く、テーブルに案内する、といった仕事をした。

 新顔か? などと聞かれて来歴を答えると、みんなに驚かれるのが新鮮だった。今日だけだし、みんなもすぐに慣れるだろうけど。


「9時でいったん閉店にゃ。皿洗いと後片付けをよろしくにゃ」

「分かった」


 多くないのですぐ終わるはずだが、なかなか慣れずに少し時間がかかった。


「昼はどうしてる?」

「パスタとサラダとスープだけにゃ。みんな冒険にいっていないから昼も少ないにゃ。サラダとスープは朝の残りもので、パスタだけ作るにゃ。だから11時までお休みにゃ」

「毎日同じメニュー?」

「パスタはそうにゃ。2、3種類を毎日提供しているにゃ」


 11時に再開して14時まで、朝と同じぐらいの忙しさで昼も過ぎていった。つまり、忙しくなかった。


「17時から20時までは夜の部で酒も提供するにゃ。肉料理とか味のしっかりした料理、油の多い料理が好まれるにゃ。結構忙しいにゃ。だから15時ぐらいから夜料理の仕込みをしておくにゃ」

「ここが稼ぎ時なんだね」

「酒にゃ。高くても、懐に金が入ったばかりだから財布のひもが緩んじゃうのにゃ」


 夜の部は確かに忙しかった。依頼を終えて気が大きくなった冒険者たちは、飲むわ食うわでどんどん注文する。終わったら結構疲れた。


「終わった後の片付けが大変なんだにゃ」

「洗う皿が多すぎるね……」

「余ったやつで明日のスープを作るにゃ」

「1人でこれだけこなすのは大変だな。朝昼は店を閉めて人を入れて夜を長くしたらもっと稼ぎがよくなりそうじゃない?」

「昼はカットしてもいいかもしれんにゃ。朝は夜の余りを処理するしたいから開けたいにゃ。もっと人を呼ぶにはどうしたらいいかが問題になりそうにゃが。夜は長くすると色々大変にゃ。自信ないにゃ」

「そっか。ありがとう、お疲れ様。毎日これでは大変だね」

「手伝いありがとうにゃ」


 休み休み働いたとはいえ、拘束時間が長い労働にくたくたになってしまったアルテミス。部屋に戻るとすぐに寝入ってしまった。

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