第13話 結果の検証①
朝食を食べようと食堂へ歩いていると、武器防具屋の前にちょっとした人だかりができているのが目に入った。新しく看板ができたらしい。ジェマがうまく説得したんだな、ワッツも仕事が早い。
「なんだ? 買取額が分かるようになってるぞ?」
「材料をくれたら、それを使って安く武器防具を作るって?」
がやがやと冒険者たちが話し合っている。これが自分たちにとって得なのか損なのか。やってみないと分かるまい。だから結果を検証しないと。
「おはよう、アルテミス」
「あ、おはよう、パメラ」
「いよいよ今日からね!」
「僕たちはとりあえず結果を見るだけだ。今日はどうする?」
「受付の仕事があるわ」
「じゃあ僕は現場を見ていよう。余裕があれば他のみんなのところも見たいところだけど」
「そうね、じゃあ私はいくわ。またね」
「頑張って」
パメラは自分の仕事に行ってしまった。なんだか仕事に行く奥さんを見送るヒモ亭主のような会話をした気がする。美人な奥さんに飼われる人生は、どうなんだろうか。男の夢だな。パメラが奥さんか……なんて妄想も悪くないが、頭を切り替えよう。
「開店前にワッツに一言ことわりをいれにいくか」
食器を片付けて、武器防具屋に向かって裏口から中に入る。
「ワッツ、おはよう」
「おはようだ。今日から新しいことを始めるだ。ジェマに仕事のやり方を変えろと言われただ。うまくいってほしいだ」
ワッツは強ばった顔をしている。なにかを新しく始めるとき、誰でも緊張する。そのせいだろう。
「話は聞いたよ、きっとうまくいくよ。邪魔をしないから今日も店の様子を見せて欲しいんだ。1日ずっと見てるわけじゃないから、いいかな?」
「分かっただ。夕方ぐらいがいいと思うだ。依頼を終えて帰ってくるから、買取が多いと思うだ」
「分かった、夕方に見に来るよ」
それまでは他の現場を見ることにしよう。
朝イチから食堂は開いているから、お客はいた。冒険者たちだろうが、1人だったりパーティだったり、武器をもった体格の良い、いかにも冒険者といったものから、魔法使いや回復係のようなものもいた。中には女の冒険者もいた。役目が分からないものもいた。
自分は冒険者のことは知らないで生きてきたなぁ。
食べ終わると、彼らは受付付近に集まる。今日の依頼を確認するためだ。自分たちの能力と報酬などを総合的に判断して依頼を受けるみたいだ。もっとも、鉱山の魔物退治が多い。こんなに頻繁に魔物が出て操業できるのかと思ってしまうが……。
依頼を受付たら、道具屋屋に行くパーティーがそれなりにいる。ポーションとか状態異常を治す道具を買うみたいだ。最低でも1人1つ、複数買うのもよく見かける。在庫の確保が大事だな。必要最低限の在庫を追及するのは難しいかも……。依頼の数が決まってないし、発生も不定期で予測できない。
準備ができたら、出発。午前中はがらんとする。昼には早く依頼を終えたり、昼から活動するもの以外は人がいなくなる。アルテミスも部屋に戻って帳簿や財務諸表を見て考える。夕方になって、依頼を終えたり失敗したり、中断したりしたものたちでごった返す。
ワッツのところに行くか。
ワッツの店は珍しく人でいっぱいだった。相変わらず修理の依頼も多かったが、何件か材料の無償支給があった。作るのに2週間と言っていたが、冒険者たちのことを考えると5日以内にしないといけない。宿に長く泊まる宿泊代が馬鹿にならないし、早く新しいモノを試してみたいはず。とりあえず、修理が減らないと。まぁ、滑り出しは順調なのかな。
夜になると食堂は酒を出す。料理も酒に合わせたものにかわる。依頼が終われば酒を飲んで発散させたい気持ちもわかる。でも、冒険者はちゃんと金は貯まるのか、蓄えはあるのか心配だが。あと、ニキータは働く時間が長くないか? 大丈夫なのか?
今日も現場をみて分かるところの多い1日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます