第11話 説得

「ワッツ、今日もよく働いたな。ちょっといいか」

「終わったからいいだ。しかし、今日は一日中じーっと3人に見られていて気色悪かっただ」


 ワッツは少し不機嫌そうに答えた。店の後片付けをしている。


「仕事の邪魔だったのは悪かったが、理由がある。お前の働き方を変えないといけない」

「どういうことだ?」


 ワッツは手を止めた。


「何か悪いことをしただか?」

「お前、自分の作った武器防具が売れなくてどう思っている?」


 ジェマが強い口調で問い詰めると、ワッツはうなだれた。見ないふりをしていたものを正面からズバリ聞かれてしまったからだ。


「…辛いだ。一生懸命良いものを作ってるつもりだ。最近は修理も多くて時間もとれないだ、それでも良いものを作ろうと一日中ずっと考えて、隙間時間で一生懸命作ってるだ。…でも、結果はご覧の通りさっぱりだ…どうしたらいいか分からなくて悩んでるだ…。そんなにオラの作ったものはダメなものなのか?使ってみたら分かるだ、でも高いからといつも断られてしまうだ…」


 ワッツは体を震わせて涙を溢した。ジェマは優しい声でワッツの肩に手を置いた。


「1人で悩ませて悪かった。今日見ていた分かったが、お前は仕事が多すぎる。他の2人もそう言っていた。あれでは考えも浮かばない。良い方法があるから聞いてくれ。お前の作ったものが売れるようにする」

「す、すまねぇだ…」


 そうしてジェマが買取額を変動させる、材料を無償支給してもらう2点を説明した。


「買取仕事は減ると思うし、売れるものを作るんだ」

「うーん…作ったものを売ってくれると言うから期待したのに、何か違うようでがっかりだ」

「違う、まずお前の作った武器防具を使ってもらうことが何より重要なんだ。使ってもらって良ければ信用が生まれる。そしたらあとはワッツが作ったものなら大丈夫だと勝手に売れる。今のお前には信用がない、だから高いと難癖つけられて売れない。本当に良いと思ったら、人は高くても買う。むしろ高いから安心して買う」

「注文通りのモノを作り続けていれば他のモノも売れるようになるって、そんなに簡単にうまくいくだ?」

「注文通りのモノを作ってお前の武器防具が冒険者たちに広まったら修理の仕事が減る。そういう良いモノを作ってるだろう?違うか?」

「そ、そうだ。オラのはあんなに簡単に修理しなくて良いだ」

「なら信じろ。明日から変更だ。看板を出せ」

「わ、わかっただ。やってみるだ」


 こうして武器防具店に新しいお知らせができた。魔物別の買取額を明示したものと材料無償支給の新しい試みが。明日以降の冒険者たちの反応が楽しみであり、不安でもあった。

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