第9話 棚卸し③

 武器防具屋の結果はこれで、道具屋と食堂の結果はこれだな…。あとは帳簿から最近買った分の単価をかけ算してやれば在庫金額は出るから…っと。問題は武器防具屋で作った武器防具だけど、ワッツさんの時給を使おう。4週間あればだいたいは作れるっていうから時給に4週間分の時間をかけ算した金額に材料代を足せばいいか。あとはばらして足し算してやれば結果

は出ますっと。


 そんなこんなで出来上がった部門別の在庫金額を見ると……。


「まぁ、武器防具屋が重たいよねぇ…」


 想定はしていた。食材やポーションは消費期限があるから多くは持てないが、武器防具は消費期限がないし、売れ残って錆びたとしても、直せば商品として残り続ける。


「買取した材料も結構あったし、売れないって言ってたし…」


 これを受けてどうするか、が一番大事だ。


「武器防具屋が一番重たいです、って言ってもじゃあどうする?って返されるよなぁ…。買取を減らして冒険者がよそに流れて本業がダメになっても良くないしなぁ…」

 

 ぶつぶつと独り言を言いながら夜は更けていく。


 翌朝。


「結局、良い案が何も出てこなかった…」

「それでひどい顔なのね…」


 うなだれるアルテミス。腕組みをして宙を睨んだまま黙りこむジェマ。アルテミスを慰めるパメラ。


「結果は分かったが、どうしたらいいんだ?」

「分かりません…ちょっと武器防具屋の現場を見てきます…」

「皆で見に行きましょうよ」

「俺たち2人は見てないしな。良い知恵が浮かぶかもしれん」


 武器防具屋に3人が行ってみると、修理待ちの冒険者が数人いた。


「何の修理待ちなんですか?」


 アルテミスが冒険者の1人に尋ねる。


「武器の剣だ。鉱山の魔物は土属性のやつらが多いから硬くて刃こぼれするんだ。矢も折れる」

「他の皆さんも武器ですか?」

「俺は防具だ。土属性のやつらは地面を掘るやつもいて、爪の攻撃が鋭利で防具が削れる」

「なるほど。ちなみに、新しく武器防具は買っていかれませんか?」

「武器が折れれば買うが修理ですむなら買わない」

「防具は良いものらしいが値段がな…。手持ちがない」


 アルテミスは礼を言ってジェマに小声で尋ねる。


「高いって言ってますが…」

「モノは良いんだよ、ただ何個か依頼をこなしてからじゃないと買えないってことだ。良い武器防具を使った方が身体的にも金銭的にも楽になることを知らない連中が多い」

「良い武器防具を使うと楽になる…」


「パメラは見ててどう?」

「ワッツは修理で大変そうね。目が死んでるわ。みんながワッツの作ったものが買えれば修理も減りそうなのに、うまくいかないものね。売れるモノで使ってくれるものだけ作れないのかしらね?」

「ワッツの作ったものを使ってもらえば良い…」


 アルテミスの頭の中で何かが閃きそうだった。

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