第8話 棚卸し②
「モティ、ワッツ、ニキータ、今日はお前たちに話がある。こちらはアルテミス・グレイ伯爵だ。ギルドの経営管理をすることになった。そのアルテミスから依頼があるから聞いてほしい」
「皆さん、お疲れ様です。さっそくですが、皆さんに棚卸しをしてほしいのです」
3人とも、なんじゃそりゃという顔になる。
「一言で言うと、お店で売っているものの原材料と商品を種類別に数えてほしいのです」
腹がでっぷりしたネコ型の獣人であるニキータから質問が出る。
「食堂で売っているものを数える?意味が分からにゃいのだが」
「ニキータさんの担当する食堂は原材料だけで結構です。すなわち、野菜や肉などの食品が対象です。モティさんはポーションや魔道具の商品だけ、ワッツさんは原材料の魔物の皮や爪などと商品の武器防具です」
ターバンを頭に巻いて不思議な躍りを舞いながらモティが尋ねる。
「いつやるのでしょうか?」
「すみませんが、今週末の休日に1日かけてお願いします」
ドワーフのワッツも続く。
「なんでやるだ?」
「道具屋、武器防具屋、食堂の3つがギルドにありますが、それぞれが儲けているのか損しているのか分からないのでそれを明らかにします。それが分かれば、本業の依頼仲介が儲けたのか損したのかが分かりますし、結果として冒険者ギルド全体として今後やっていけそうかどうかが分かります」
「もしかして、損して潰れそうにゃのか?!」
「分からないのです。だから、それを明らかにするために調べるのです。そのために棚卸しが必要で、皆さんご協力をお願いします」
3人は顔を見合わせて答えた。
「分かったにゃ」
「数えるだけなら構いません」
「いいだよ」
「休日出勤ですまないが、みんなよろしく頼む。もちろん、俺もアルテミスもパメラも一緒に手伝う。俺はモティ、アルテミスはワッツ、パメラはニキータの補助だ。数えるだけだ、さっさと終わらしちまおう」
そして棚卸しの日。道具屋では。
「棚のポーション余りまくりじゃねぇか」
「3種類ありますし、1日で結構売れるときがあるのです。冒険者の命がかかってますから切らすわけにはいきません。在庫は必要です」
「色の薄いやつがあるじゃねぇか。効かないだろ?どの種類かも分かりにくくないか?」
「在庫処分で安く売ります。分からないやつは捨ててます」
「魔道具は少ねぇな」
「アルテナに行かれる方用に火の魔道具は少し仕入れますが、後はあまり売れないですから」
「真面目にやってるんだな…」
武器防具屋では。
「材料が多いですね…」
「珍しいものがきだら買っちまうだ。良い武器防具が作れるかもしれねぇと思ってな」
「捨てませんか?」
「もっだいねぇ!良いものが出来るかは作ってみねぇと分かんねぇだ」
「売れるんですか?」
「武器は少しは売れるだ。でも修理の依頼が多いだ。防具は売れねぇ。試着して欲しくなっても値段を聞いて諦めるやつが多いだ…」
(確かにこの鎧みたいなのよく出来てるなぁ…)
食堂では。
「きちんとしてるわねぇ!肉は塊ごとに産地と日付書いてあるし、野菜もまとめて箱で管理してるなんて」
「当たり前にゃ。料理で使う肉は違うし、熟成させた方がうまい肉もあるにゃ。材料がベストにゃものをベストな仕方で料理しているつもりにゃ」
「端数の余りがないわね…」
「自分たちで食べるか、夜に回して材料は使いきっちゃうにゃ。何日もおいとくと腐るしまずくなるにゃ」
「美味しい賄いをたくさん食べちゃうからそのお腹なのね」
「…否定できないのにゃ」
現地現物で分かることが多い1日だった。
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