第5話 アルテナへの使途不明金

 昨日の調べた結果を纏めると、帳簿と現金が一致しているから帳簿は正しい。借入金は200から250に増えているが、現金は50あるから実質の借入は200だ。でも減らせていない。その上、使途不明金がある。この前提条件を理解した上で何ができるか。しかし、やはりここは・・・


「食堂に行くか」


 やっぱり食べないとね。今日の朝ご飯は麦ご飯。鶏がらの野菜スープに炙ったサーモンの切り身。生野菜と果物はリンゴか。うーん、大量に作って置いておける料理だなぁ。それだけ朝から人がくる証拠でもあるけど。


「おはよう、アルテミス」

「あ、おはよう、パメラ」


 パメラと何度かやりとりするうちに互いのぎごちなさがとれ、普通に会話を交わせるようになった。


「今日は依頼多いの?」

「鉱山で魔物の討伐よ。受付に人が溢れて裁くのが大変になりそうよ」

 機嫌が少し悪いみたいだが、傍目にはぷんすこぷんぷんと可愛らしい怒り方をしているように見える。


「怒っても可愛いね(まぁ落ちついて)」

 不機嫌なパメラの顔が固まった。そして、みるみる顔が赤くなって両手で頬を押さえる。頭がぼんっと爆発しそうだ。

「・・・え、いまなんて、え、え?」

「(本音と建前がぎゃくぅー!)な、なんでもないから、ほら、ね、食べようよ、忙しいなら食べとかないとね?」

「う、うん、そうね、食べてから考えましょう・・・」


 急に黙りこくらないでくれ、パメラ。


「可愛いを・・・?」

「ぶほぉ、し、しごとあるよ!急いで」


 お陰で朝食はゆっくり食べられなかった。明らかに自分のミスだ。あーあ。しかし、美人が顔を赤くして照れる仕草は悪くない。


「いやいや、ジェマに確認が先だ」


 ジェマの部屋に向かうべく、食べ終えた皿を片付け、受付横の階段を上ってジェマの仕事部屋に入るのだった。


「アルテナへの支払いは何かだと?」

「はい、フォルセナから資金を入れてもらっているのに他国のアルテナに支払いなんて説明が必要です」

「これだから現場を知らないやつは」


 ジェマが軽く咳払いをした。


「アルテナは今、マシンゴーレムを開発しているんだ。その開発費だよ」

「マシンゴーレム・・・ですか?」

「機械でできたゴーレムだ。できたらうちにも回してもらう」

 ゴーレムは人間より少し大きい泥人形で魔物だ。

「何に使うんです?」

「鉱山に送って魔物討伐に一役買ってもらう。冒険者に依頼しなくてすむから全額ギルドの取り分になる」

「本当なら良い話です」

「試作機は見せてもらった、普段は二足歩行で手も使えるんだが、攻撃時はチェーンソーを武器に走り回る。足も車輪やドリルに変形して高速移動ができる。ただ、故障しやすくて改良しないとダメだ」

「それで借入が増えてるんですか・・・。他国の技術力強化にお金払って協力してる形になりますが・・・」

「フォルセナは機械を使う発想がない。兵士を量産すれば良いと思っているが限界がある。幸いここは目の前がアルテナだし、情報も入ってくる」


 ジェマは真剣な目をして付け加えた。


「いいか、何もしないとフォルセナは負けるぞ」

「寄付は続けるおつもりですね?」

「当たり前だ。マシンゴーレムをお前も見ると良い。戦闘以外にも使えるぞ」

「ちなみに、完成時にマシンゴーレムがもらえることを明記した書類はありますか?何台くれるんでしょうか?」

「・・・は?書類なんてないが・・・。台数も決めていない、まだ完成は先だ」

「踏み倒されるかもしれませんよ!急いでアルテナと書類を取り交わしましょう」

「本当にいるのか?一応、信頼できる人間だぞ?」

「いります!でも誰なんですか?」

「アルテナのアンジェラ王女だよ」

「・・・!王女にサインを貰いにいくのは気が引けますが、仕方ありません。連れて行ってください」


 こうしてアルテナに向かうことになった。

 

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