第4話 ギルドと帳簿

 翌日、用意されたギルド服に着替え部屋を出る。動きやすい実用的な服だ。

 帳簿のこともあるので、今日はパメラに現場を説明してもらうことにした。少し緊張しているみたいだ。


「ここが冒険者ギルドの受付です。街や

村からの魔物討伐、貴族や商人の護衛、希少なモノの採集といった依頼を冒険者たちに掲示して、報酬などの条件が一致したら受付を完了させます」

「ギルドの取り分はどれくらいですか?」

「依頼の掲示で報酬の10%を依頼主から、依頼の完了で報酬の10%を冒険者たちからもらいます。相手と内容次第で調整です」

「依頼主はギルドに110預ける。ギルドは100の報酬で冒険者に依頼する。依頼が完了するとギルドは冒険者に90の報酬を支払う、ギルドの取り分は10ずつの計20、そんな仕組みですね」

「そうです」


 先に金が入る両手の仲介か。依頼の数が少ないのか、完了できない難しい依頼が多いのかな。冒険者には少し分かりにくいかもしれない。

 

「依頼の数とか完了、未了の数を調べることはできますか」

「簡単な記録ならありますが・・・」


 そういって紐で閉じた紙の束を受付の中から取り出した。日付、依頼内容、依頼期限、依頼主からもらった金額、報酬の額、冒険者のチーム名、ランク、冒険者たちからもらった金額が綺麗に並べて書いてあった。


「この街の魔物討伐系の依頼が多い・・・」

「ポトスには鉱山があるのですが、魔物が住み着いてしまったんです。だから、ギルドを作ったんです。兵士を常駐させると高くつくので。街とは魔物討伐の依頼を常時結んで、1ヶ月の討伐数の依頼料をもらっています」


「ポーションと魔道具は定期的に売れますし、魔物の毛皮や爪やアイテムを買取って、加工して武器防具を作って売ります。食堂はそれなりに人がきます。夜は酒場です」


 聞く限り問題が見当たらない。一応、それぞれの店も見て回ったが、普通だった。細かく見れば問題はあるかもしれないが、良くも悪くも普通。すると最後のアレしかない。そこでも問題がなければ、潰れそうというのは嘘なのか?


「じゃあ現金を見せてもらいましょうか。帳簿と一緒にね」


 最初にジェマと会った部屋に金庫があって、その中に現金がはいっていた。金貨50枚、銀貨85枚、銅貨107枚。


 帳簿は現金の出入りが書かれていた。フォルセナからの借入は金貨200枚だったが、250まで増えている。残高の数字は先ほど数えた硬貨の枚数とあっている。


「いや、ありがとうございました」

「どうでしょう、問題でも・・・?」

「今日見た限りでは見あたらないです。ちょっとこの帳簿借りますね。しっかり管理されているように見えました。帳簿や記録はパメラさんが?」

「そうです。受付の午後は少ないので帳簿や記録をつけています」

「現金残高と帳簿の残高が合っているので信頼できる帳簿です」


 パメラは少し安心したようだった。紅潮した顔からほっと一息ついた。


「今日はこれで十分です。ありがとうございます」

「はい、また何かあれば仰って下さい」

 

 借りた帳簿を持って部屋に戻る。部屋に鍵をかけ、寝る準備をすませて帳簿を見る。ジェマには「紙と睨めっこするならこの部屋を」といわれたが、独り言を言いながら紙をめくる姿をパメラに見られたくなかったので断った。無くしたり盗まれたり粉飾すると問題なので本当は帳簿を持って帰ってはいけないのだが、職場で寝泊まりしてるようなものだから大丈夫だろう。


 帳簿を開く。フォルセナからの借入金貨200枚から始まって建物の建築や商売道具を買った開業準備にお金を使い、開業してからは、依頼引受の預かり金と達成時の支払い、ポーションや魔道具の仕入と売上、魔物の買取費用と武器防具の売上、食堂の食べ物の仕入れと売上が読みとれた。利息は払っているが、なぜか少しずつ借入をしている。運転資金が足りないのか?それに・・・


「定期的にアルテナに支払いをしている?フォルセナじゃなくて?」


 うーんと背伸びをして椅子にもたれかかる。これは困った。他国に献金するのは理由次第ではよろしくない。


「ジェマに確認しよう。ディラックに手紙を書いて聞いてみるのも手だな」


 釈然としない思いを抱えて夜は更けていった。

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