数日間、学校にもジムにも行かなかった。

 ただ、何もないで家にいて、時々町をフラフラ歩いている日々が続いた。こうして、暮らしてみるとこの町には本当に何もないということが改めてわかる。

 学校の前を通ると、学校のチャイムが鳴った。帰りのホームルームが終わる頃だった。黒島たちに合わないようにその場を足早に去ろうとすると、いつか体育館裏で会った4人組が俺の方へと歩いてくる。その中には黒島をリンチした二人もいた。

「よお。最近、学校来ないから探したぜ」

 黒島の一件後、俺は学校へは行っていない。こいつらはずっと俺を探していたのだろうか。4人の手には短い木の棒みたいのが握られている。

「おい。来いよ」

 黒島をあんな風にしたのは憎かったが、黒島はここで俺が暴力をふるうことを望まないと思い無視して歩き始める。

「おい、どこ行くつもりだよ!」

 細い男が頭部めがけて棒を振り下ろす。俺は難なくそれをかわす。

「この野郎」

「おい。人気があるここはまずい」

 攻撃しようとする止めた太めの体格な男が続けて話す。

「メガネの兄さん。体育倉庫で続きやろうじゃないか」

「嫌です。戦いたくない」

「そんな寝ぼけていることを言っていると、また可愛いお友達を襲っちゃうぞ」

「友達って、黒島のことか」

 俺の目の色が変わったこと一瞬男たちの顔がこわばる。

「そうだよ」

 俺がいなくなってもこいつらは腹いせに黒島たちのことを襲われる。俺が休んでいた時に彼女たちは襲われてなかっただろうか。不安がよぎる。

「あの子たちに手を出していないですよね? やるなら俺をやればいいじゃないですか」

「さあ、お前には関係ないだろう」

 決着をつけないといけない。

 だが、この勝負には勝敗はなかった。勝っても負けても黒島たちが無事ならばそれで良かった。

「わかった」

 俺は男たちに言われるがまま体育館倉庫へ足を運ぶ。


 側頭部に手を当てるとベッとりとした自分の血が付着した。

 もともと、武器を持っている男4人を相手するのは初めから無理があったが、反撃しないと決めていた俺はすぐに頭部やら身体のいたるところを負傷させられそこから血が噴き出していた。

「おい! どうしたんだよ!」

 後頭部を棒で振り下ろされる。前方によろめいて血が床に飛び散る。意識が朦朧として意外にも殴られた痛みはさほど感じなかった。

 さらに腹を棒で突かれ、右頬を叩かれる。吐血した。床に血が広がる。死ぬのだろうか。そうだ。ちょうどいい。俺なんていない方が良い。

 その時だった。体育館の倉庫のドアが開き、黒島たちが入ってきた。入るや否や彼女たちは4の男に殴りかかった。

 最初こそ、彼女たちの攻撃は男たちを怯ませていたが、基本的に男が女に殴り合いでまともに勝負できるわけがない。森は膝蹴りを食らいうずくまり、浜辺は壁まで追い込まれ腹部を何度も殴りつけられ、土屋は後ろから腕で首を絞められ窒息寸前で、黒島は倒れたところを男たちにサッカーボールキックされて呻いている。

 あの時もうそうだった。あいつをいじめていた奴らと俺が喧嘩している時に、あいつが助けに来てくれた。しばらく交戦して、2人で敵うはずもないと思った俺たちは全力で駆けて逃げた。振り向くとあいつの姿はなかった。

 遠くで、何かガラスのような音がぶつかる音がした。あいつは一命を取り留めたが、そこからあいつはあいつでなくなった。

 俺が悪いことくらいわかっていた。

 自分が大事なものを傷つけられていると黙っていれず、その傷つけるモノには形振り構わず戦う。

 暴力は暴力を生む。

 そのことをいくら学んでも自分を抑えることできなかった。

 俺がいることで周りが不幸になる。

 俺さえいなければみんなこんな仕打ちを受けなかった。

 こんな俺なのに、いつもそばにいてくれる奴は良い奴ばかりだった。

 ごめん。また俺は過ちを繰り返す。

 男の1人に殴りかかったところまでは覚えているが、またそこから先の記憶がなくなっていた。

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