⑩
次の日、学校へ着くとすぐにあの女の姿を探した。
女は窓際で仲良しの二人と何事もなかったかのように楽しく会話をしている。見つけるなり、真っすぐに女たちに近づいていく。
「おい」
「あ?」
茶髪の女が話のを止め俺に顔を向ける。
「昨日、黒島たちにどうしてあんなことをした」
「何のことだよ」
女は髪をかき上げて鼻で笑う。
「おい。こっちは真面目に話しているんだ」
声の大きさこそ変えなかったが、殺気が伝わったのか女はなめ切った余裕の表情から徐々に真顔になっていく。
「お前のこと無視しろって言ったら嫌だってさ」
「え?」
「生意気だったからちょっと絞めたんだよ。結構面白かったよね」
一番小さい子がお腹殴られた時の歪んだ顔なんて良かったよね。みんな吐いた時の声がウシガエルみたいでウケた、ウケた、と両側にいた女が同調する。
俺は茶髪の女の胸ぐらをつかんで詰め寄る。
「ふざけんなよ。お前られも同じようにしてもいいんだぞ。こっちは」
本気だった。今俺たちを見ているクラスメイトから女に手を上げた最低な男子生徒と言われようと、暴力事件でこの学校を退学させられようと全く問題はなかった。むしろ、理性で殴らないように抑え込めているのが不思議なくらいだった。
「おい、離せよ! 離せよ!」
茶髪の女は慌てて必至で制服を掴んでいる手を振りほどこうと俺の身体を殴る蹴るなどして抵抗する。その抵抗など効かず、掴んだ手の力はますます強くなり茶髪の女はつま先立ちの状態になっていく。さらなる殺気に、身の危険を感じたのか恐怖で顔を引きつらせながら両側にいた女は俺たちから数メートル離れる。周りからもおいおいヤバくないか。と声が聞こえてきた気がした。
「わかった。わかったよ。悪かったよ。離してよ」
いつの間にか茶髪の女は抵抗を止めて苦痛の表情を浮かべていた。
俺はまだ感情を静まらすことはできなかったが、それでも何とか抑えこんで女から手をゆっくり離す。
「二度とあいつらに手を出すな」
息が荒くなってこちらを睨みつけている茶髪の女に、そう言い放ってその場を離れた。しかしこれ以上、あの女の顔を見ていると殴りつける以上のことをしそうで怖かった。
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