第5話 カイトの場合
プレイヤーを志したところで、わがままを言い続けたおかげで俺のゴール数は片手で数えるほどしかできていない。ゴール数がすべてではないけれど、これでは非モテと変わりない。俺はそもそも婚活をしているわけではないのだ。あくまで装っているだけ。ハロウィンのコスプレと一緒だ。限度はあるけれど、ただでさえ時間が無いのにブスだデブだと言っている場合ではない。
同僚の若い女が俺の後ろを通過する。本当はこんな女とやれればいいのにな。でもそんな贅沢は言っていられない。愚直に目の前のゴールを拾っていくしかないのだ。
贅沢すぎるんだ。俺を含めたおっさん達はすぐ若い職場のかわいい同僚とあとくされ無しでやることを考える。「若い」「同僚」「かわいい」「あとくされ無し」。そんな都合良くいくか。全てトレードオフのゼロサムゲームなんだ。世の中のおっさんは、「おっさん」、「既婚者」、「金がない」、「時間が無い」。何もないくせに「若い」「同僚」「かわいい」「あとくされ無し」を求めるなんて驕りがすぎる。金がある奴はパパ活でS級を抱けばいいだろう。地位がある奴は秘書でも抱けばいいだろう。時間がある奴は婚活女を騙したりナンパしたりすればいいだろう。俺には何もない。俺にあるのは、筋トレで鍛えたこの肉体だけ。
翻ってこの豚だ。ブタはブタだが、「都合よく」俺に抱かれてくれる。所詮俺が都合よく抱けるのはこのレベルなんだ。高みを目指す。それはそれで素晴らしい。しかし高みってなんなんだ?S級を抱く?それこそ俺のリソースを全てセックスに捧げなければならなくなる。そもそも恋愛工学とは、女などという下らないことで悩むことを止めるための学問であるはずだ。ナンパ師のように数を追い求めることでも、絶世の美女を追い求めることでもない。俺の人生は素晴らしい。そういって死ぬためのものだとおれは思っている。
‥と自分を納得させて、これから豚を抱く。嫁の目をかいくぐって作った時間で、あまり猶予がないので自宅近くの鶯谷駅に呼び寄せてしまったことを後悔していたが、手さえ繋いでいなければカップルとみられることもないだろう。時間通りに豚は駅前まで来た。シンプルで清潔感のある格好をしている。相変わらず太かったがよく見ると愛嬌のある顔をしていた。軽く挨拶を交わし、並行して歩きながら線路沿いに2店ほどあるラブホテルのうち1店に向かった。裏道に入り、人通りが無くなったことを確認した俺はいきなり豚にDKをし、パツパツに脂肪が膨れ上がっているスキニーパンツのボタンを外してCTを始めた。既に豚は濡れていた。平日早朝から、人に見られたら完全に公然猥褻罪である。その頭の片隅に鎮座している下らない知識が良いスパイスになり、興奮が加速する。先ほど服用したシアリスもハーモニーを奏で出した。下半身はバキバキだ。豚も「あぁぁ‥」といい声で鳴いた。1分か2分位だろうか。そろそろ人が来るかもしれない。場外戦はそこそこにして俺たちはパレスに入場した。
水曜日の早朝にも関わらず部屋はあまり空いていなかった。宿泊客で埋まっているのかもしれないが、平日からお泊りセックスをしている人間はそれなりに多いんだなあと少し興味深く思った。
「ここ空いてるよ。」
アタック25のような大きなパネルの下側の、2階の一番安い部屋を豚が指さした。こいつはつくづく性格がいい。なまじ顔が可愛くて非モテが群がっているB級女子だったらこうはいかないだろう。可愛い子豚だ。鍵を受け取った俺たちはエレベーターに乗った。当然エレベーターでは猥褻行為だ。DKしながらブラウスのボタンを外し、ブラをずらし、その巨乳だか脂肪だかわからない胸の真上に乗っている干しブドウ体を一度抓ったが、エレベーターは一瞬で目的階に到着した。エレベーターを降りると清掃員が他の部屋の清掃作業で廊下で作業をしていたが、関係なく乳首に爪を立てながら自分たちの部屋に入った。
ホテル内での立ち振る舞いもシークレットベースでは共有されている。半蔵という変態パパ活社長がいつも偉そうに書き込んでいる、「娘をお姫様として扱う」を実践してみることにした。俺の場合豚だけどね。「お姫様、こちらです。」さっきまでの雑な扱いと打って変わって、部屋にエスコートする。靴を片足ずつ脱がせてあげる。コートを脱がせてあげ、かける。ソファに促し持参したペットボトルのウーロン茶をコップに入れて出す。
「お姫様、そろそろマッサージのお時間です。」
マッサージから前戯に入るのはシークレットベースでは当たり前のルーティンである。ほかの連中は美女に技術の全てをささげているのであろうが、俺は豚である。とにかく想像力だ。安い形成肉でも霜降り牛だと思えば脳みそが騙されるのだ。俺にはイマジネーション、想像力がある。豚だろうが巨乳の美女になるんだ。目を瞑れ。触感を研ぎ澄ますんだ。物質には意味はない。精神世界こそがこの世を支配する。
極太のバイブをアナルに入れた豚が横たわり、下着とSVRが散乱し、ぬるく湿ったシーツが不快だ。何の努力もせず、ありのままの自分を愛してくれなんておこがましい。俺は努力をした。努力した結果がこれだ。普段は吸わない煙草を取り出し、火をつけた。豚の方は極力見ないことにしている。死にたくなるから。煙草を吸い終わり、不快なシーツに戻る。豚の頭をなでているとなんとも言えない気分になり、二回戦を始めた。
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