彼女の日常
雨のち雫
彼女の日常
♢♢彼女の日常♢♢
ピピピピッ ヒピピピッ
彼女は聞きなれたスマホのアラーム音で自身を覚醒させた。相当に寒かったのか、布団を被り直すと、また目をつぶってしまった。
5分後に同様の音が部屋に鳴り響く。それでようやく体を動かす気になり、彼女は立ち上がった。
身体を震わせながら、真っ先に向かうのはリビングの窓だ。カーテンを掴むと勢いよくそれを開ける。日光が体全体を包み込み、彼女は気持ちよさそうに体を伸ばした。
次に向かうのはお風呂場。
大学に入学して、一人暮らしを初めてからは毎日、朝と夜にお風呂に入っている。
と言って言っても朝は体を流すだけで、体を起こすという意味合いが大きい。
すると、
「冷たっっ!」
そんな声が聞こえた。
きっと寝ぼけて、まだ水が温まらないうちに体に当ててしまったのだろう。
「ふふーんふふーんふーーーん」
しばらくすると曲が聞こえ始めた。若い女性の間で流行りの曲だ。自然と頭に入ってくるメロディと心に刺さる歌詞が特徴的だ。
♢♢♢♢
お風呂から出るとテレビをつけて、スマホをいじろうとする。が、どうやらスマホが見当たらないらしい。
しばらくして、ベットから動かしていないことに気がついたのか、寝室へと向かいスマホを持ってきた。
そのタイミングで持っていたスマホが鳴った。恐らく電話だ。
「もしもし? お母さん? どうしたの朝早くから。………あ、本当? ごめん全然気づかなかった。えっと……」
彼女は耳から電話を話して画面を触り始めた。
スマホについた鈴のストラップが響く。
「本当だ。えっとね、誕生日はこっちで過ごすつもり。………え? いや別に彼氏とかいないって! ……別にいいでしょ! 年末には帰るんだから、逆に面倒だって! 時間ないから、切るよ、じゃあーね!」
それだけ言うと、無理やり電話を切ってしまった。
思ったよりも時間がないことに気がついた気がついた彼女は、急いで次の支度を始めた。
洗面所に向かい髪をセットし、メイクをする。いつもよりも音が大きいのは急いでいるからだろうか。
そうして支度が全て終わると、最後にキッチンへと向かった。
コップに牛乳を入れる。その後パンをトースターに入れて焼き始めた。
彼女はあまり効率的に行動が出来ない。先にパンをトースターに入れてから牛乳を入れれば、多少なりとも時間の短縮にもなったのだが、彼女はそれに気づかない。
それに、少々彼女はガサツな節がある。実はパンも消費期限が一日切れている。
さらに忘れっぽく、意味不明な言動も多いことから、友人からは天然な子として扱われていた。友人からいくら言われようとも彼女は一向に認めようとしないのだが。
『7位から11位まではご覧の通り。射手座のあなたは時間をしっかりと守った方がいいかも。ラッキーアイテムは、ストラップのついたもの!』
「うわ、やば! もうこんな時間じゃん!!」
彼女は持っていたトーストを皿の上に置くと急いで立ち上がった。そして、あたたかそうなコートを着て、カバンを持ち玄関へと行く。
「いってきまーす!」
それだけ言うと部屋を出て、今日も学校へと向かっていった。
♢♢僕の日常♢♢
ピピピピッ ヒピピピッ
聞きなれたアラーム音で目を覚ました。
起きてから暫くは動けないので、僕はスマホをいじったり、外を覗いたりしていた。
しばらくしてから僕の寝室から起き上がり、キッチンに向かった。適当にあった食パンを見繕い、行儀が悪いと思いながらもシンクの上でそのまま食べる。
そこでふと気がついた。
「げっ、消費期限切れてるじゃん」
まぁ、いいか。死ぬわけじゃないし。
食べ終わるとリビングへと向かいテレビをつける。朝のニュースを見るのが日課となっており、僕の情報源はほとんどニュースだ。
しばらくすると曲が聞こえ始めた。若い女性の間で流行りの曲だ。自然と頭に入ってくるメロディと心に刺さる歌詞が特徴的だ。
しばらく聞いていたが、それが終わったのでテレビを消して僕の寝室へと帰った。
♢♢♢♢
そろそろ支度をしなければならない。
今日は少し急ぎ目に。
少し早歩きでリビングへと向かい、テレビをつける。
さっき朝食は済ませたものの、小腹がすいたのでテーブルの上にあった食パンと牛乳を平らげる。
『今日の最下位は、ごめんなさい、牡牛座のあなた────』
急いでお風呂に向かう。最速で服を脱ぐと、シャワーのヘッドを頭に向けてお湯を出した。
軽く体を流すだけでお風呂場から出て、身支度を整える。ドライヤーをしている時間は無いかもしれない。
カバンを持ち、鏡の前に立ち最終確認。
小走りで玄関へと向かうとカバンから靴を取り出す。
ガチャ。
「スマホ忘れちゃっ…………」
彼女と目が合う。
「え、誰?」
彼女の日常 雨のち雫 @Drop-After-the-Rain
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