「キャラクター」
「
「今回は少し人数が多いですものね」
現在、今日も今日とて担当編集である山口さんと膝付き合わせて自宅にて打ち合わせの真っ最中である。
ついでに難航しておりますこれもいつも通り。
「なかなか話の流れ持っていきたい方向に行かないんですよ」
「・・・この部分の会話削っても良いんじゃありませんか?」
「でもホラ、ここで否定しないのはコイツのキャラじゃないかなって」
「うーん、まぁ多少らしくはないかもしれませんが」
「ボクは気になって仕方がないです」
「あーだ」
「こーだ」
「真面目に」
「はい」
自分で振ったくせに。
「ちょっと休憩にしましょうか」
「はい」
軽く背筋を伸ばすと全身いたるところからパキポキコキャっと軽い音がした。プラスチック並みの強度しか無さそうだ。頼りない。
「あー・・・上手くいきませんねー・・・」
いっそのこと一からやり直したい感すらある。
「でも大筋はもう決めてしまってるでしょう」
「どうしても会話運びに違和感が拭えないんですよ」
「一応、数少ない知人をモデルにイメージして、コイツならこのタイミングでこういうこと言うだろう、って感じで会話を積み重ねていくわけですけど、それだとどうしても理想通りには進まないんですよね」
そう。リアルなコミュニケーションというのは常に変化と流れがある。
集団において等しく皆に順番に発言の機会が巡ってくるわけではない。
発言の内容もタイミングも、よくよく見極めなければ場がシラけるし、流れに乗れずあわあわするこないだのキャバクラでのボクである。
うっせぇわ。二度と行かん。
「まぁ先生にそんな会話の流れを掌握するスキルがあればこんな狭い部屋に一人で閉じこもって作家なんて仕事してませんよね」
「まぁその分会話の自然さは意識してるつもりなんですけど」
そうだボクは失敗したのではない、失敗という経験を積みに行ったのだ。
「確かに。先生の作品、最近キャラに関してはぼちぼち良くなってきてるんですよ。他の項目に比べれば、ですが」
「大丈夫です。自覚はあるので」
「いや大丈夫ではないですけど」
まぁその辺りは優秀な編集さんが補ってくれるので。
「ところで先生」
「なんでしょう山口さん」
「今書いてらっしゃるのは次回の特典掌編の様にみえるのですけど、間違いないでしょうか?」
「はっはっは、ご慧眼でいらっしゃる」
「これの納期がいつまでだったか、ご存じでしょうか?」
「はっはっは」
「あっはっは」
ほーらね、上手くいかねぇー。
作家モドキの思ふところ。 鵲 @hkasasagi
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