3言目「ファンタジー」
「学園ファンタジー系の作品て」
「はい」
今日も今日とて恒例の打ち合わせ・・・はそっちのけで、息抜きと称して撮り溜めていたアニメを山口さんと二人で視聴している。
「なんであんなに女子の制服可愛いんでしょうね」
「絵師さんが頑張ってくれてるからでしょう」
「ボクどうにもアレ納得いかないんですよ」
「えーと、・・・遠回しに〇〇〇さん(←ボクの作品の絵師さん)への不満にシフトしていく流れですか?」
確かにボクは普段から仕事の愚痴を溢してばかりだったけど、ちょっと深読みし過ぎだと思う。
「いや別にボク、あの人の絵は嫌いではないですけど」
「先生にあてがう人探すの地味に大変なんですよね。性格的に」
「なんでわざわざより傷をえぐる注釈を付け足したのか聞いてもいいですか?」
「傷をえぐるためですけど」
正直すぎるなこの人。
「だいたい、性格も何も作家と絵師さんが直接会わないケースだって別に珍しくないじゃないですか」
この業界のちょっと不思議に感じるところで、作家と絵師さんはパートナーと呼んでもいい関係なはずなのに、編集さんを通してのやりとりで全て済ませてしまう場合も多い。
・・・まぁ人見知りが多いだけかもしれないが。
「いえ私の仕事が増えるのが面倒だなぁ、と」
自分の話かよ。
「出来ればそういうのはもう少しオブラートに包んでくれると助かります」
「オめブんラどーいト」
「???、・・・あぁ、凄いけど分かりづらい!」
器用だなぁこの人。
「で、何の話でしたっけ」
一頻り人を傷つけて満足したのか話の続きを促してきた。自由過ぎて羨ましい。私生活の面においては人の事を言えた義理ではないかもしれないが。
「えーっと・・・・・・・・あ、そうそう制服のデザインとかについてですよ」
「はぁ。私は可愛くて良いと思いますけど」
チラリとテレビの画面に視線を移す。まぁ話の発端ではあったのだけど、今観ていたのはラノベ原作の学園バトルファンタジーものであった。現在進行形で画面の中では現実にはあり得ないスタイルとか髪の色をした女の子がほっそい腕で大剣を振り回したり、魔法をぶちかましたりと、所狭しと大暴れしている。
「いやいや。実用性とか完全に無視しちゃってるとしか思えないじゃないですか」
戦争なんかも普通に行われている世界観のハズなのに、皆着ている衣服が何故か学校の制服である。狙って下さいと言わんばかりの派手で目立つ色彩、動きの邪魔にしかならなそうな無駄にでかくてたくさん付けられたリボンなんかの装飾、ヘソとかフトモモを惜しげもなく晒す防御力皆無の布面積。
そしてなにより一番不憫なのが、シンプル過ぎるデザインの黒っぽいローブを纏う男子生徒の地味っぷり。
モブどころか黒子みたいだ。
「いえ、私は結構実用的だと思いますよ」
「どこが」
「エロいでしょ」
「そっちかよ」
けど説得力はすごい。(←全裸より半脱ぎ派)
「それに普通に短いスカートで飛んだり跳ねたり、破けたら縫ったり買い直したりしなきゃですし、ジャージに着替えろよ!とか思いません?」
「無いんじゃないですか? ジャージ」
「いや、ジャージはないかもしれませんけど。それに準ずる衣類はあるでしょ。多分」
運動用のシンプルなのとか。少なくとも汚れてもいいボロ着とか。
「先生は見たいですか? せっかく見目麗しいお嬢様とかエルフとかが派手な魔法合戦繰り広げてるのに、来ている衣服がジャージの作品とか」
ふむ。
「・・・・・・いやむしろ萌える⁉」
「ねーよ」
「いやブルマ的なものなら・・・、ちょっとプロットつくってみます!」
「却下ですよばかやろう」
せっかく仕事する気になったというのに。解せぬ。
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