第25話 名も無き開拓村


予定より大幅に遅れて開拓村に着いた。


普通の乗り合い馬車なら恐らく途中で壊滅させられて居ただろう。


あの後にもう1度襲撃が有りそちらはオークの集団だった。


オークが28匹、エリス曰く間違い無く異常だとの事だ。

開拓村までの街道の森にオークが居る事は無いと


俺はまたM79のグレネードを使ってオーク達を悶絶させてからサブ達がペスペス、ペスペス22口径のロングライフル弾でヘットショット勝負をしていた。


エリス曰くオークはご馳走!


アンナも俺達になれて来たのか

お肉食べたい!

と甘えて来たので要らない頭をヘットショットして全て俺が収納した。


エリスとマルコ、サブとタモツのアイテムバックだと大きすぎて入らないらしい。


28匹のオークがお肉か・・・


腹壊さないよな?


そして昼過ぎに開拓村に着いた。


開拓村は全員で9家族、約50人居るとの事だ。


約と言うのはこれまた定番の奴隷システムが有り奴隷は物なので人数にはカウントされてない。


また開拓村システムも引退した兵長や騎士団長が村長になり開拓して人が増えたら村から町へ、町から街へ、街レベルまで開拓すれば男爵位がもらえて貴族になれるとの事だ。


兵長や騎士団長クラスになれば知力、武力、統率力が無いとそこまでの出世はできないのでただ引退されるには惜しい存在だ。


開拓村システムは三代継承できるらしい。


三代中に町に出来なければ村長一族から平民に降格。


退職金に開拓セットと開拓民、奴隷セットをもらって開拓村でスローライフか・・・


中々過酷な世界だな・・・


村の中を歩いてエリスのボロ家に着いた。


開拓村だもんな! そんなもんだ!


この開拓村でのエリス達のポジションは嫁人員と労働力だそうだ。


エリスはマルコが寝たきりなので武力で開拓村に貢献、にジョブチェンジしていたが嫁人員にはかわりなかった。


俺達は1度全員で村長の家に挨拶に行った。


「良く無事に戻ってきたな、エリス。

マルコもすっかり良くなったな。」


村長がバンバンマルコの肩を叩いていた。マルコの笑顔が引き攣ってるのが丸分かりだ。


村長が俺達の紹介をしろとエリスに無言のプレッシャーをかけてエリスが村長に俺達を紹介した。


俺達の身分は事前にエリス達と相談して有る。


ダンジョンでエリスを助けた旅の傭兵団って事にした。


「そうかそうか、エリスが世話になったな。」


「俺の名前はリバル、この開拓村の村長をしてる。

元辺境伯の騎士団の団長をしていた。」


今は居ないが副団長も居て村長代理だそうだ。


一通り挨拶をしてエリスのボロ家の奥の森を切り開く代わりに使用許可をもらってエリスの家と俺達の仮住まいを作る予定だ。


帰りの襲撃の獲物も全て村に渡したら今夜は歓迎会をしてくれるらしい。


俺達も快く歓迎を受けて酒を提供した。


開拓村では何年か振りの宴会らしく非常に盛り上がったらしい。


らしいと言うのは俺達三人は早々にキャンピングカーに引っ込んだからだ。


これからの事、マルコの事、エリスの事、1番の問題のステータスの事を話し合っていた。


コンコン!


ノックの音がしてサブが対応した。


現れたのは村長のリバルと副村長のモーガンだ。


スジャク団長に再度お礼が言いたくてな。

あんな高価な酒を振る舞ってもらって感謝している。と

二人は笑顔だが目は笑っていない。


酔ったフリはしているが恐らく酔ってはいないだろう。


村長と副村長をテーブルに招いてワインとチーズをサブが給仕している。


リバル村長は流石に元騎士団長、怪しい俺達が気になって仕方が無い様だ。


警備に出ていた副村長の話によるとどうも開拓村の周辺の森がざわついていると。


そこで俺達が大量の魔物を持ってきたので最大級の警戒をしていた。


俺は村長の目を見つめながら話し始めた。


「リバル村長、俺達が怪しいのは自覚している。」


「村には迷惑をかけないと言いたいが恐らく無理だろう。

多分何回か魔物の襲撃を受けると思う。」


リバル村長は俺の目を見つめながら話の先を促していた。


「俺達は呪いを解いたマルコとエリスの守護者として女神ミヤから遣わされた召喚者だ。」


「なっ!なに?」


「では三人は勇者様なのですか?」


モーガン副村長がテンパる。


「話しをしたろ?

あくまでもマルコとエリスの守護者なだけだ。

この国の勇者じゃ無い。

勇者は恐らくマルコだ!」


リバル村長とモーガン副村長が息を呑む。


「村長に挨拶の時に渡した獲物は全てこの開拓村に向かう途中で駆除して来た魔物達だ。」


「かなりの異常事態なんだろ?」


「そうだな。」


「ゴブリンの数でさえ異常なのにグリーンウルフ、そして1番の異常はオークだな・・・」


「この辺ではオークの生息地はもっと森の奥ですのでハグレが一匹とかでしたら分かるのですが・・・」


普段、開拓村のパトロールが主な仕事のモーガン副村長がつぶやいた。


「あのレベルの群れが襲ってきたら村は壊滅しますね。

男は殺され女達はオークの慰み者にされて苗床にされる。

普通は騎士団で対応するレベルの群れです。」


モーガン副村長が口元を歪ませながら言う。


「でだ、村長、そちらの戦力はどれくらい出せる?」


「戦力とは村の防衛にか?」


「そうなるな。」


「俺にモーガン、元部下が3名 5名は戦力としては数えられる。」


リバル村長がため息を吐きながら言った。


「女神様や勇者様の話がなければ全員今直ぐにでもこの村から出て行ってもらいたいんだがな・・・」


「後は男衆と弓が使える者で15名位ですね・・・」


モーガン副村長も顔をしかめながら話した。


「それだけ戦力あれば余裕か?サブ」


「余裕ッスね! 兄貴!

ドラゴン襲撃イベが来てもワンパンっスよ!」


あれだけの武器があればドラゴン位は余裕で倒せるか・・・


ドラゴン見た事ねーけど・・・


ゴ○ラ クラスが来たらどうにもならんぞ?


「タモツも防衛戦出来そうか?」


「はい。ちょっと見て回って見ましたが明日中には出来ると思います。」


俺は村長、副村長を見ながら


「だっ、そうだ。」


村長と副村長は顔を見合わせながら呆れ顔をしていた。


「明日また相談しよう。」


口を空けたワインともう一本ワインをお土産に持たせて村長達は宴会の輪に戻って行った。


「朱雀さん、チュートリアル防衛戦来ましたね!」


タモツ、嬉ションしそうな程震えてるぞ?


サブもワクワクしながらデフォっスデフォっス騒いでる。


落ち着けよお前ら・・・


取り合えず明日だな。

早めに寝て明日に備えるか・・・


「兄貴には明日フルに働いて貰うっスから先に休んで下さいっス!」


「俺とタモっちゃんで予定を詰めとくっスから。」


「任せて下さい。朱雀さん。

完璧な防衛拠点の図面作っときますから安心して下さい。」


「そか

じゃ、夜明けまで寝させて貰うな。」


「はい! お休みっス、兄貴」

「お休みなさい。 朱雀さん」


俺は二人に任せて休んだ。


エリスの話では夜明けは大体4時くらいらしいから5時間位は寝られるな・・・


俺は4時にアラームをセットしてキャンピングカーの寝室のカーテンを閉めて眠りに着いた。



☆★☆★☆★☆★☆★


すっかり日が暮れた漆黒の森の奥に漆黒の羽を持つ蝙蝠が飛来して来た。


蝙蝠は森の中でも一際不気味な枯木の間を飛んでいる。


いつの間にか辺りを霧で包まれた毒々しい色の沼の前で数回クルクルと廻っていると霧が晴れていつの間にか朽ち果てた様な大きな洋館が姿を現した。


蝙蝠はそのまま洋館の中に入ると白髪、赤目で仕立ての良さそうな執事服を着た初老の男の頭上でクルクルと廻った。


「ん?

どうしたのだ? ハイゴブリンとハイオークの集団で討ち漏らしも無いと思うが?」


話ながら執事服を着た初老の男は右手を出して漆黒の翼を持つ蝙蝠を腕に止まらせた。


漆黒の羽を持つ蝙蝠は初老の執事と思われる男の腕に止まりキーキーと報告をしていた。


「何?

全滅しただと? ゴブリンが50のオークが28が全滅?

勇者もどきが覚醒でもしたのか?」


黒い羽の蝙蝠はキーキーキーと詳しく報告をしているみたいだ。


「人族が6人でそのうちの3人が土魔法のアイアンバレットらしき物で壊滅させたと?」


勇者もどきが覚醒したのか? 嫌々、勇者に覚醒するには時間が早すぎる。

人族の成人にならないと勇者の加護は付かないはず・・・

ましてや主様の呪いで半死半生だったはずだ・・・


「キーキー」


分からぬか・・・


せめて私が視界だけでも使っていたら詳しく分かったのだがな・・・


「弱りましたな、お嬢様に報告したらまた癇癪を起こしてしまいますね・・・」


私の眷属が自由に動けるのも日が落ちてからですからね。


「あの人族の住家の近くのダンジョンマスターは誰ですか?」


キーキーキーキー


「うむっ、第16ダンジョンですか。」


「とりあえずお前はハイオーガと第16ダンジョンマスターに連絡をして私の所に来る様に言いなさい。

その後は引き続き勇者もどき達を見張りなさい。」


お嬢様が気付く前にこんな雑事は消化してしまわないと・・・


私が直ぐに動けるのなら夜の間、簡単に処理出来るのですがね・・・


中々上手く行きませんね・・・



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る