第23話 導火線


警察庁、公安局外事課の鈴木と佐藤は苦虫をかみつぶしたような表情で虎ノ門に有る雑居ビルに入って行った。


公安局外事課の作戦本部に使っている雑居ビルだ。

因みに雑居ビル全体が警察庁の警備部、関連部署のダミー企業になっている。


既に連絡はして有るが直に上司に報告しない訳にも行かないからだ。


課長、報告書の通り捜索した結果弾丸の一発も出て来ませんでした・・・ と鈴木


監視体制の不備も無く突入のタイミングも間違い有りませんでした。


大使館の車も行きと帰りで重量変更が有るのは画像解析により間違いありません。

ですが・・・


各種探知器を使っても不振な空間も検知出来ず又包囲網の隙間から運び出す事も不可能です・・・

忽然と消えたとしか・・・


君達はそれを私が上に報告しろと言うのかね?


鈴木、佐藤、共に押し黙る。


分かってるのか?


リボルバーの拳銃が数丁入って来た訳じゃ無いんだぞ!

ダンッ!


怒りに任せて机を叩く鈴木、佐藤の上司。


この国は銃規制の極めて厳しい法治国家だ。


その水際、最前線の我々の影ながらの努力でこの国は平静を収めて居るんだぞ?


今回、軍用の実弾だけで何発入ってきたと思ってるんだ!!

百じゃなく万だぞ? 万!

ダンッ!!


この情報を流して来たCIAに何て説明したら良いんだ・・・


大使館の車両が敷地内に入ってから作戦開始、捜索の記録は間違い無く取って有るな?


はい。それは間違い無く。


しかし課長、奴らは組織の抗争でここまでの武器弾薬が必要なのでしょうか?


そんな事私が知るか!

ダンッ!


再度机を叩く鈴木、佐藤の上司。


とにかく、一人も敷地内から出すな!

入れるな!


監視を倍に増やしても構わない。


絶対にブツを押さえるんだ!


鈴木、佐藤は背筋を伸ばして

はっ!


敬礼をして上司の部屋から出て行った。


ハァァ~ 部長に相談して外注に出すしか無いか・・・


できればあんな奴らを使いたくは無いんだがな・・・



☆★☆★☆★☆★☆★


首都、深夜の外資系ホテルのスイートルーム


髪を整え仕立ての良いスーツに身を包んだ30半ばのエリート官僚の様な男がソファーに座り酒を飲みながら報告を聞いている。


でっ?

再開発の件はどうなっとるんや?


ハイ。

未だに安田の常務一派が主導権を握っている状況でして工作も仕掛けて居るんですが・・・


居るんですが? 何や!


ハイ。

常務一派のバックに居る藤堂組の連中に尽く邪魔をされてます。


オィ!

分かっとるんか?


今回の再開発の件は先生方も一口噛んどんのやぞ?


そんな藤堂組とか言うチ○カスとっとと潰して来い!


それがですね、おやじ・・・・


なんや!


組対に入れてるモグラからですが藤堂組の若頭補佐が大量の武器集めてるとかで・・


大量の武器?

 

ハイ。

モグラの情報によると何でも警視庁の組対を通り越してCIAの情報で公安が出てるとかで・・・


公安が? そんなにヤバいブツ外から入れとんのか?


ハイ。

イタリアのマフィア経由でコンテナ1台分とかで普通の抗争の量をかなり超えてるらしいです。


全て軍用らしくライフルとか手榴弾とかを大量に入れたらしいです。


それに藤堂組全体に公安の監視が敷かれてるらしくですね、

警視庁の組対もその監視業務に駆り出されてるらしいです。


それはちょっとマズイな・・・


具体的なブツの量は確認したんか?


ハイ。

確認はしているのですが米国のCIAからの情報らしく中々情報を集められそうに無いそうなんですが・・・


今の所NATOの軍用アサルトライフルやスナイパーライフル、サイレンサー一体の暗殺銃。手榴弾、グレネードを数種類・・・


それと弾丸が合計で数万発だとの事です。


数万発? そんなにか?


ハイ。

ヤバめのブツばかりだそうです。

スナイパーライフルは対戦車ライフルと言われているブツらしいです。


そりゃそんなブツ入れたら公安出て来るわな・・・


うちは今どれくらい揃えられる?


チャカが4~50でマシンガンは10手に入るかどうかです。


相手が軍用でしたら防弾も効かないかも知れません。


うちも準備だけはしとけ!


ロシアのアレクセイから買ったらエエがな。


引き続きモグラにどの程度の武装を手配したのか確認させて準備だけはしとけ。


ハイ。


ッチッ!

中々上手くいかんな。


一応、外注の準備だけはしとかなあかんかー


できれば奴ら使いた無いんねんけどな・・・


☆★☆★☆★☆★☆★



なに?

エンプーサが倒されただと?


豪華な椅子に座った浅黒い肌の長い銀髪に銀目、長い耳を持った女が跪いて報告している猪顔の鎧を着た人型に不快感をぶつけるように言い放った。


ハイ。

ご指示通りにダンジョンの11階の壁に転移陣を使ってオークとオーガも送り出しました。


そのオーク達はどうなったのだ!


ハイ。

全て倒されております。


エンプーサは49階の門番では無いのか?


ハイ。

人族が一人でかなうはずが無い門番です。


人族の事はどうでもよい!

して、月下草はどうした?


ハイ。

ダンジョンより持ち去られ・・・


ピシュ!       


ゴロゴロゴロ

猪顔の首が風切り音と共に地面に転がった・・・・


使えぬ配下は要らん!!


ジイ!


お呼びでしょうか? マイロード。


この使えない豚を片付けぃ、目障りだ!


御意に・・・


ジィと呼ばれる白髪の赤目、黒の高級そうな執事服を着た初老の男が指をパチンと鳴らすと猪顔の首も跪いたままのからだも黒い霧に包まれて体液までも綺麗に消えていた。


月下草が奪われたのは少し面倒だな。


マイロード、一応私の眷属を監視に回しております。


街から出て住家に帰る途中で襲ってみては如何でしょうか?


そうするか。・・・


あの辺は何処の部族が居る?


森の奥にゴブリン族の群れと更に奥にオーク族の群れが有るかと思います。


奴らが街を出たらハイゴブリンとハイオークに奴らを襲えと群れに命令を出す様に言え!


イエス、マイロード。


初老の執事らしき男は返事と共に黒い霧に包まれて消えて行った。


チッ、使えないクズ共め・・・





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